肛宴のお龍

40.偵察隊

夜も更けた東組の座敷には三味線の音に合わせて芸者衆の歌う越後獅子の声が響いていた。座敷の中央には一糸まとわぬお龍が仰向きにその裸身を横たえていて、明るい照明が 均整のとれた身体の隅々までを煌々と照らしだしている。ようやく足縄を放してもらったので、大きく開かされていた両脚をピタリと閉じ、太腿を少し重ねるようにして周りを取り囲んでいるヤクザ達の視線から少しでも無毛の恥丘を隠そうとしているが、両手は後手に縛られているので固くしこった乳首を載せた豊満な乳房は隠しようもない。しかも直腸には未だ三個の大きな卵が入ってい て虎視眈々とお龍の官能器官を狙っているのである。

「さあ、お龍さんよ、もう邪魔はしないからさっさと立つんだよ!」

お銀に言われてお龍は卵をできるだけ動かさないようにゆっくりと上体を起こすと、横座りになって「フゥ」と安堵の溜息を付いた。未だ卵は悪戯をしないようである。 そして膝をピタリと閉じたままで何とか尻を持ち上げて正座しようとするが、やはり膝を閉じたままでは叶わない。

「アァ」と熱い溜息を付いたお龍は諦めたのであろう、まるで周りを取り囲んだヤクザ達の視線に抗うように顔を左右に振りながら膝を大きくずらせた。無毛の恥丘が、そしてその下 に隠れていた陰裂の一部までが露わになり、ヤクザ達が身を乗り出して覗きこむと、お龍は少しでもヤクザ達の視線から局部を守ろうとするかのように、豊満な乳房を太腿に押し付けるように上体をぐいっと折り曲げ た。そのことにより重心が前に移り、引き締まった美尻を畳から浮かせることが出来たお龍は、素早く尻を踵に乗せるとすぐにまた膝を閉じた。

お龍があっと言う間に膝を揃えて正座してしまったので、ヤクザ達の間から落胆の声が漏れたが、一瞬遅れてお龍が「アゥゥゥ」と喘ぎ 出した。直腸の中で卵が獲物を見つけたのだ。まるでヤクザ達に見事な裸身を誇示するかのように胸を反らせて豊満な乳房を突き出しながら、お龍は正座したままの裸身をブルブルっと震わせたのである。

「やっぱり気を遣りましたか」

相模屋が満足そうにお龍の顔を覗きこむと、お龍は顔を背けて「ハーハー」と荒い息を吐いた。

「ほら、休憩してないでさっさと立つんだよ」

お銀に急かされるとお龍は一つ大きく息を吸い、正座から爪先を立てて跪座(きざ)の姿勢になってから、ゆっくりと膝を浮かせると恐る恐る立ち上がった。

しかし如何にゆっくりと立ち上がったところで正座の姿勢から立ち上がれば、肛門と直腸の作る角度が変化するので直腸に詰まった3個の卵は位置を変えざるを得ないのである。しかも先程から徹底的に弄られて非常に敏感になっているお龍の官能器官は、ほんの少しの刺激でさえも貪欲に快楽に変えてしまうのである。

「ハゥゥゥゥ」

少しでも快感を抑えようと少し腰を屈めたお龍は、陰核から溢れだそうとする白濁液を漏らさないようにと必死に太腿を閉じ合わせたが、それでも裸身がブルブルと震えだすのを抑えることは出来なかった。

「ほら、ちゃんと立たないか!」

お銀がそう言いながらピシャリとお龍の尻を平手で打つと、「ヒッ」と悲鳴を上げてお龍は腰を伸ばしたが、その動作がまた卵を動かしたのであろう、お龍は背筋をピンと伸ばして真っ直ぐに立ったまま、「アゥゥゥゥウウウ」と呻いて再び気を遣ったのである。

オォ、という声がお龍を取り囲んでいるヤクザ達の間から沸き起こったが、三味線の音は何事も無かったように続いていた。

「さあ、早くカズヤの前へ行くんだよ」


偵察隊の西竜也と南平吉郎はなかなか東組の門の中へ入れずに、向かい側の小屋の影からずっと門の付近を伺っていた。芸者衆が家の中へ入って行ったあとも、次々に一人二人と若い衆が、特に見回りの役目という風も無くふらふらと現れ、中には門の外にまで出てくる者もいたのであった。しかしそろそろ諦めて塀をよじ登ろうかと相談していると、パタッと誰も出てこなくなったのである。しかも大きな木の門扉は少し開いたままである。

「行くぞ」

竜也が呟くように言うと、二人は左右を二三度確認してから表通りを横切り、足を忍ばせて厳しい門の前に立った。門扉は少し開いているが、人が通れる程ではない。

竜也がゆっくりと門扉を押すと、『ギイ』と不気味な音がして人ひとり通れるようになったが、玄関の中には聞こえなかったようだ。屋敷の中からは微かに三味線の音が流れて来る。竜也は黙って頷くと先に身体を滑り込ませ、平吉郎があとに続いた。

玄関の中は煌々と灯りが点いているが誰もいないようだ。三味線の音に混じって芸者衆の甲高い歌声も聞こえてくる。

二人は左右を見渡した。

左手は玄関のすぐ横から背の高い木の塀が張りだして外塀まで繋がっている。木戸があるが少し押してもビクともしない。

仕方なく二人は右手に進み、木々の茂った庭に忍び込んだ。

「あれは風呂場だな、その奥に台所がありそうだ。煙突を見れば分かる」

平吉郎が小さな声で言ったが、竜也が突然人差し指を口に当てたので平吉郎も黙った。 灯りのついている台所の中に人影が見えたのだ。それも二人。どうやら女のようである。

隣の小さな部屋から先は部屋の外側が廊下になっていて、廊下の外側には木の桟のガラス戸が 嵌められ、部屋との仕切りは障子であったり板戸であったりする。最初の小さな部屋には灯りが点いていて、障子が半分開いているのでガラス戸越しに中を伺うと、年配のヤクザが座卓に座って 帳面に何か書き込んでいる。

その隣の部屋は障子ではなく板戸だが、良く見ると板戸が開かないように何枚もの細長い板が打ちつけられている。しかも軒下の小さな明り取りの小窓も板で塞がれているのである。

妙だな。

二人は顔を見合わせた。

「見てくる」

竜也はそう呟くと、左右を確認してから腰を屈めたままで木陰を出ると庭を横切り音もなく広縁の下に潜り込んだ。座敷牢ではないかと思ったのである。

さらに床下へと入り込んだ竜也は息を殺し耳を澄ませた。

上の部屋はシーンと鎮まりかえっていて物音一つしない。

ここじゃないのか?

竜也がそう思った時、足音が近づいてきた。早足で歩く女の足音だ。

足音は竜也の真上まで来て止まった。

「お嬢さん、遅くなったけど夕食だよ」

「要りません!」

お、お嬢さんの声だ。

竜也は心臓が高まるのを感じた。お嬢様は無事だ。お龍姉さんは、ここに居ないとなるときっと座敷でヤクザ達に……。

「食べないと身体を壊すよ。嫁入り前なんだろう?」

「要りません!」

「ここへ置いておくから、欲しくなったら食べな」

女中と思しき女はそう言うと去っていった。

竜也は声を掛けたかったが何とか我慢した。そして平吉郎に手で合図すると、するすると床下から抜けだして庭の木陰に戻った。

「お嬢様はあの部屋だ。お龍姉さんは居ない」

二人がさらに奥へと進むと、角の部屋はどうやら仏間のようである。灯りは点いてないが廊下から漏れる光に照らされた畳の上で誰かが寝ているようだ。 しかも寝ているのは二人だ。

お龍姉さんを嬲り者にするという東組にとっては今までの鬱憤を晴らす絶好の機会だというのにどうして二人も寝てるんだ。飲み過ぎてくたばったのか?いや、そんな風には見えない。鼾も聞こえないし、きちんと両足を揃えて仰向けになって寝ているのだ。しかも仏間で?

竜也と平吉郎は不思議そうに顔を見合わせたが、再び仏間の方に目をやった平吉郎の顔が強張った。

どうした?

竜也は平吉郎が黙って指差す方を見た。

竜也の顔も歪んだ。

仰向けに寝ている二人の男の顔には白い布が被せられていたのである。

竜也達は注意深く周りを警戒しながら仏間に近づき、中を覗きこんだ。 白い布が被せられているので顔は見えないが、二人共若そうである。若い男が同時に二人も命を落としたというのは何か争いごとがあったに違いない。しかしそれほどの怪我をした様子も無い。

「お龍姉さん」と竜也が呟いた。

お龍なら傷跡も残さずにあっと言う間に二人の男を葬る位は訳もないことだということを竜也は十分知っていた。 いつも髪に刺している仕掛け簪を相手の脳幹に突き刺すのはお龍の得意技の一つである。脳幹をひと突きされた相手は、気づいた時には絶命しているという恐ろしい技である。しかし、 二人の若い衆を殺してもまだお龍が囚われているとなれば、東組の復讐は凄まじいものになっているに違いない。急がねば。

竜也は平吉郎に合図すると茂みに戻り、鬱蒼と茂った木々の間を左手に進んで裏庭の方へと足を早めた。屋敷の裏側には茶の間らしき部屋に続いて八帖程の部屋が二つ続いてい て、それらの外側はやはり木の桟のガラス戸を嵌めた廊下で囲まれている。しかしどの部屋も 真っ暗な上に障子がきちんと閉まっていて中を伺うことは出来ない。

二人はそのまま木々の間を進んで行ったが、突然2つ目の部屋の灯りが点いて、男の影が現れた。二人は足を止めてしゃがみ息を潜めた。

スーッと障子が開いて、中から姿を現したのは鉄二である。

二人は再び顔を合わせた。さっきは門のところで、今は奥の居間らしきところで、一体若頭の鉄二が何をやってるんだ?

廊下に出た鉄二はしばらく煙草を吹かせてたと思うと、急に中に入り障子をピシャリと閉じた。

その隣はかなり大きめの角部屋であるが灯りは点いていない。 そしてその向こうから三味線の音に混じってヤクザ達の歓声が聞こえてきた。きっとそこでお龍姉さんが嬲り者になっているに違いない。竜也は平吉郎をチラッと見ると立ち上がって歩を進めた。

大きめの角部屋をぐるりと左手に回ると果たしてその隣は大きな座敷であろう、外側はガラス戸を嵌めた広縁になっていて、その広縁の内側には四枚の大きな障子がピシリと閉ざされているが煌々と灯りが点いていて、中からは三味線の音に合わせて長唄が聞こえてくる。

この中でお龍姉さんが……。

竜也が歯を噛み締めているとヤクザ達の歓声が上がった。

竜也と平吉郎は茂みの中をさらに進んで座敷をまっすぐに見通せる位置まで来た。障子に4人の座った男の影が映っている。上半身は裸のようだ。

何をしてやがるんだ?

二人が目を凝らしていると別の影がゆっくりと近づいてきた。

女だ。しかも上半身裸のうえに肘から下が見えない。両手は前か後ろで括られているようだ。

お龍姉さん!

竜也は食い入るようにその影を見つめた。

さらに影が近づいて来ると裸に剥かれているのは上半身だけではなかった。その影は一糸纏わぬ全裸なのだ。そして時折身体をくねらせると、その度に一瞬だが豊満な乳房までがくっきりと障子に映った。全裸に剥かれた上に両手は後ろで括られているのだ。

ちくしょう!

竜也は両手を握りしめた。

その影は右から二番目の男の前まで進むと歩を止めた。

ヤクザ達が何か言っているが聞き取れない。突然女の鋭い声がした。お龍ではない別の女だ。ヤクザ達が静まり返り、三味線と芸者の歌だけが相変わらず聞こえてくる。

もう一度女が何か言った。命令するような口調だ。

静かに立っていたその影が頭を左右に何度か振った。まるで嫌々をするように。

しかし、諦めたのか影は少しずつ二番目の男に近づいて来る。しかも少しずつ脚を開きながら。

ヤクザ達の歓声が起こり、その影は大きく脚を開いたままその男の目の前で止まった。すると男は右手をその影の局部付近に伸ばした。

微かに喘ぎ声が聞こえた。

間違いなくお龍姉さんの声だ。何をしてやがるんだ。

竜也は歯を食いしばった。

しばらくして男は右手を引っ込めるとその手を口の辺りに持っていき、まるで酒を呑み干すように上を向いた。

再びヤクザ達の歓声が起き、その影はさらに男に近づいた。そして男の体に跨るようにしゃがむと同時に今度ははっきりとお龍の喘ぎ声が聞こえた。

「ひでえことをさせやがる」

平吉郎が唸るように言った。お龍が無理矢理に性交させられていると思ったのだ。

しかしお龍の身体の秘密を知っている竜也には、お龍が一体何をされているのか分からなかった。

別の男の影が現れ、お龍の両足を持ち上げると、跨っている男の後ろ側で交差させて括ったようだ。

再びお龍の喘ぎ声が聞こえた。

そしてその影が消えると、お龍とお龍が跨っている男の影が一つになっていた。男がお龍をきつく抱いているようだ。

お龍姉さんに何をしようとしてるんだ?

今度は着物を着た女の影がお龍のすぐ後ろに近づいた。女は何事かお龍に言うと数を数え始め、まるでそれが合図であるかのように突然お龍が喘いだのである。

女の手が動いている様子は無い。お龍に跨られている男の手もお龍を抱いたままである。

だのにどうして?

再びお龍が喘いだ。

何をされているんだ?

竜也は居ても立ってもいられず、周りを素早く確認すると中腰のままで茂みから飛び出し、脱兎のごとく庭を横切って広縁の下に潜り込んだ。そこからならもっと座敷の中の物音が良く聞こえると思ったのだ。

竜也の予想は正しかった。いや、それ以上だったと言うべきかもしれない。広縁の下に潜り込んだ竜也が息を整え終わるや否や、まるですぐ後ろにいるような臨場感でお龍の喘ぐ声が聞こえたのである。

「…ァァアアアア」

自分の一物が固くなるのを感じて竜也は恥じた。長年一緒に住んでいても、お龍のこんな喘ぎ声は一度足りとも耳にしたことは無かったのである。

「…ァァアアアアアア」

再びお龍が喘ぎ、竜也は耐えられずに耳を塞ごうとしたがその時、喘ぎ声が一段と大きくなったかと思うと、「クククゥゥゥゥ……」とまるで絶頂に達したような呻き声に変わった。

一体何をされているんだ、お龍姉さん!

竜也は思わず股間を押さえ、息が荒くなるのを必死に堪えた。

しかし次に聞こえてきたお龍の声は竜也をさらに狼狽させたのである。

「フゥムムムゥゥゥ……フゥムムムゥゥゥ……」


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