肛宴のお龍

11.陰謀の厠

面白いものを見せるからとお銀に言われて、東の親分以下一同は倉庫に集まった。もちろん相模屋とお供の三人も一緒である。反対側の入口付近には黒い幕が天井から吊下っていて、その向こう側ではお銀の指図で若い衆が何かの準備をしているようである。

壁と幕の間からお銀がこちらにすり抜けて来ると、こちら側の若い衆にも指示を出した。

「この辺りが特等席なので、親分さんと相模屋さんの為に椅子を二つ用意して」

早速椅子が持ってこられ、二人がどっかと腰を下ろすと他の者達も周りに集まった。

「一体何が始まるんだい?」と親分が尋ねた。

「それはまだ秘密ですよ。でも親分さんも相模屋さんも満足されること間違いなし。今から二三分で連れてきますからね。幕の向こう側の入り口から入って来ますんで、引き戸が開いたら一切音を立てないで下さい。咳払いも囁くのも駄目ですよ。黙ってるのに自信の無い方は今すぐ出てって下さいね」

お銀がニヤリと笑ったが、誰も出て行こうとはしなかった。

「それからしばらくの間、電灯は一つだけにしますからね。それじゃ、よろしくお願いします」

お銀は軽く会釈をすると再び幕の向こう側に消えた。そしてすぐに倉庫の中の照明は裸電球一つだけになった。


お銀が出ていくと薄暗い中で若い衆達はざわめき始めたが、誰一人として大声は出さなかった。いつ引き戸が開いてもいいように、皆低い声でボソボソと話していた。親分と相模屋も互いの耳に顔を近づけて何事か囁いては、互いの肩を叩き合って、「ヒッヒッヒッ」と低い声で笑った。

ガラガラガラと引き戸が開く音がして、倉庫の中はシーンと静まり返った。

お銀の声がして、次にお龍の声がしたが聞き取ることはできない。

ギシギシと床板が鳴る音がして、誰かが近づいて来た。そして正面の黒い幕のすぐ向こうで立ち止まったようである。

「ここは厠じゃ・・・」とお龍の声がした。

「そうだよ、それがお龍さんの為に作った特製の厠だよ。おしっこをしてるところを見られるのは恥ずかしいだろうから、私達はあっちで待っててやるけど、つばめ返しのお龍 さんだから油断は出来ない。だからお前さん一人にして、こっちも安心できる厠を考えたんだよ」

これはお銀である。親分と相模屋は薄暗い中で互いの顔を見合わせた。

しばらくの間、居心地の悪い沈黙が続いた。

「やっと分かったようだね、お龍さん。そのとおり、あの花瓶の中にするんだよ。まずこの輪っかに首を通すんだよ」

花瓶の中に。

唾を飲み込む音があちこちでした。

「お前さんが逃げないようにね」

お銀の声がして、縄が擦れる音がした。

「これでよしと。次はそこのレンガだ。二つずつ花瓶台の左右に積んでおくれ」

もう一人が動いてコンコンとレンガを積んでるような音がした。

「縦じゃない、横向きだよ」

またごそごそと人が動いた。

「お龍さん、そのレンガの上に乗るんだよ」

少し衣擦れの音がした。

「爪先立ちになるんだよ」

再び縄の擦れる音がした。

「もう一つずつ積んでおくれ」とお銀の声がし、さらに「右足を上げな」と言うと、コツンとレンガが積まれた音がした。そしてもう一度コツンという音がした。

「これでいいかい?」とお銀が言った。

「は、はい、でも、湯文字と襦袢を絡げて頂けませんか」

これはお龍の声だ。再び唾を飲み込む音があちこちでした。

「本当に世話が焼けるね」というお銀の声に続いて、再び衣擦れの音がした。

「も、もう少し花瓶を前へ」

お龍の声に続いて、ズルッと花瓶を動かしたような音がした。

「これでどうだい?」

「あ、そこで大丈夫です」

「本当かい?見てあげようか?」

「い、いえ、本当に大丈夫です」

お龍の慌てたような声がした。

「分かってるだろうけど溢すんじゃないよ。それと逃げようとして足を踏み外したら首吊りだからね。そのままの格好で大人しくするんだよ」

「は、はい」

「じゃあ、私達はあっちで待ってるから、終わったら呼びな。チリ紙も持って来てやるからね」

「あ、ありがとう御座います」

黒い幕の向こう側ではお龍が、どんな格好かは分からないが、湯文字と襦袢を絡げて花瓶の中に排尿しようとしているのである。どんな小さな音も聞き逃すまいと、息詰まるような沈黙が続いた。

「はぁぁぁ」とお龍の小さな溜息が聞こえ、何人かの若い衆達が思わず前を押さえた。

「一つ言い忘れたけど」

再びお銀の声である。

「は、はい、何でしょう」とお龍が震えるような声で答えた。

「この部屋は倉庫だから、向こうの入り口から誰か入って来て電気を点けるかもしれないけど、大人しくしてれば気づかれないから」

お銀の声に一同は笑いを堪えて顔を見合わせた。

何も知らないお龍が黒い幕の向こうで「は、はい」と答えた。

お銀が遠ざかる足音が聞こえなくなると、すぐに 「はぁぁぁぁぁ」という艶めかしい声がして、一同は今にも排尿の音が聞こえるかと耳を澄ましたが、代わりに「くぅぅぅぅ」というお龍の呻き声がしたのである。

続いて「あぁぁぁ」という喘ぎ声が、そしてまた「あぁぁぁ」という喘ぎ声が。

一体何をやってるんだという顔で一同は互いの顔を見合わせた。

すると今度は「いぃぃぃぃ」とさらに艶かしい声がしたと思ったら、ギィという音が天井からして、お龍が「クククッ」と呻いたのである。

天井から縄で吊られているのかと、何人かが見上げるが黒い幕に遮られて何も見えない。

そして「ふぅぅぅ」という溜め息に続いて、「あぁ、あぁ」と切羽詰まった声がし、「お、おぎん・・・」 と言うような声がしたっきり、黒い幕の向こう側は静まり返っている。

再び息詰まるような沈黙が続き、若い衆が一人黒い幕のすぐ近くまで寄って耳を幕に付けた。

その時である、チョロチョロと液体の流れる音がしたと思ったら、「あぁぁ、あぁぁ、あぁぁぁぁぁ」とお龍が感極まったような嗚咽を始めたのである。

ついにお龍が排尿を始めたのである。

チョロチョロと液体の流れる音はしばらく続き、「はぁぁぁぁぁぁ」と再び艶かしいお龍の溜め息がした。

薄暗い中でも若い衆達の目がギラギラ輝いているのが分かる程で、口を半開きにしているものも多い。

そしてチョロチョロという音は、突然ジョロジョロ、ジョロジョロという大きな音に変わった途端、「ヒィッ」というお龍の悲鳴がして音が止んだ。

また排尿を止めたのか。

「あぁぁぁ」とまたお龍の喘ぎ声がし、次に「ふぅぅぅ」と息を吐く音が聞こえると、再びジョロジョロ、ジョロジョロという派手な音がし出した。

あのつばめ返しのお龍が、黒い幕の向こう側でどんな格好か分からないが、縄で拘束されて花瓶の中に排尿しているのである。それも恥ずかしい程派手な音を立てて。

一同はしてやったりという顔で頷きあい、親分が相模屋に何事か耳打ちして肩をポンポンと叩いた。

その時である。後ろの引き戸がガラガラと開いたと思ったら、お銀が人差し指を口に当てながら入ってきて、倉庫の照明を付けた。そしてそのまま黒い幕の手前までスタスタと歩いて行った。 わざとお龍に足音を聞かせようというのである。

案の定、「ヒッ」とお龍が悲鳴を上げ、排尿の音が止まった。

お銀が若い衆の一人を手招きすると何事か囁き、次にその若い衆が別の若い衆のところへ近寄ると低い声でまた何事かを伝え、今度は二人がそれぞれ別の若い衆のところへ近寄って何事か伝えた。

「はぁぁぁ」とお龍の喘ぎ声が聞こえ、若い衆たちがピタリと立ち止まると、またしても倉庫の中が静まり返った。

ついに沈黙に耐えかねるようにお龍が「あぁっ」と喘ぎ、続いてギーという大きな音がした。

お銀が若い衆の一人に合図を送った。

「おい、そっちに誰かいるのかい?」

お龍は沈黙しているようだ。

もう一度お銀が合図を送った。

「誰かいるんだろう?」と若い衆が少し大きな声で言った。

「は、はい、お龍です」と震える声でお龍が答えた。

「お龍さんだけかい?」と若い衆が尋ねた。

「お銀さんも一緒だったのですが、今は私だけ」

「そんなところで一人で何をやってるんだい?黒い幕なんか張りやがって」と若い衆が笑いを堪えながら言った。

「そ、それは」

「言えないのかい?言えないんなら、幕を開けるぜ」

「あぁ、それだけは」

「うるさい、嫌なら、言うんだよ」

「か、厠を」

「厠がどうしたんだ」

「厠をお借りしているんです」

「そんなところに厠なんか無いはずだ。嘘を言いやがって」

「いえ、本当なんです。今も使わせて・・・」

「それじゃ本当かどうか確かめてやる」

「ああ、いやあ、待って下さい」

お龍が大きな声で叫んだと同時に、ジョロジョロ、ジョロジョロという音が再び始まり、「あぁぁぁぁ」とお龍が喘いだ。

お銀は満足そうに若い衆に微笑むと壁際の細い紐を引いた。するとガラガラと音がして、黒い幕が左の壁際から開き始めた。

「あぁ、いやぁ」とお龍が叫ぶが、お銀は紐を引き続けた。左側の何人かには既にお龍の姿が見えているようだ。

「いやぁ!」と再びお龍が叫び、排尿の音が止まった。

しかし、黒い幕は動きを止めず、とうとう正面からも恥ずかしさで紅く染まった顔を真っ直ぐにこちらを向けて立っているお龍の全身がはっきりと見えたのである。

「あぁ、いやぁ」とお龍が叫んだ。

いや、お龍は単に立っているのではなかった。両足を大きく広げて三段に積まれたレンガの上に爪先立ちになり、晒しの襦袢と湯文字を大きく絡げられ紅潮させた太腿をほとんど露わにした格好で、腰の高さ程の花瓶台の上に置かれた花瓶を跨がされているのである。しかも天井からぶら下がった縄が首に掛かり、両手は後手に縛られているので、 顔を隠すこともできなかったし、少しでも 身体の平衡が崩れれば首吊りになるので、身体をくねらすことさえできなかったのである。

黒い幕はさらに開き続け、お龍の左側も、さらに後ろを遮るものも何も無くなった。

「さあ、皆さん、もう自由に喋っても大丈夫ですよ。そしてどこからでもお好きなところからお龍のおしっこするところを見てやって下さい」

お銀が言うと、若い衆がバラバラとお龍の周りを取り囲んだ。

「ヒィ、ヒィ、ヒィ」

後手に縛られた爪先立ちで首を吊られているお龍にできることは、弱々しい悲鳴を上げることだけだった。

「お京も連れて来ましたぜ」

若い衆が後手に縛られたお京を連れて入ってきた。

「お、お龍さん!」

「あっ、お嬢さん、あぁ、見てはいけません、向こうを向いて!」

「そうは行かないよ。ちゃんとお龍の方を見るんだよ。すぐに面白いものが始まるからね」

お銀がそう言うと、若い衆がお京の顔を掴んでお龍の方を向かせたが、お京は固く目を閉じている。

しかし「目を瞑ったりしたらお龍が酷い目に合うよ」とお銀に脅かされ、細い目を開けてお龍の方を見たのである。

「よし、それでいい。それにしてもお龍さん、あんなに早く早くって急かしてたのに、まだほんのちょっとしか出てないじゃない」

お銀が花瓶の底に少しだけ溜まった尿を指さしながら言った。

「まあ我慢するならしたいだけすればいいよ。こっちもじっくり見学させてもらうから」

お銀が言うと、お龍は「クククッ」と歯を食いしばったが、ついに力尽きたのか、「あぁぁ」と先程よりも一層艶めかしい声を上げると、再びジョロジョロと排尿を始めたのである。

「おや、また始める気になったんだね。それにしてもお淑やかなおしっこだねぇ。そんなにじっくりと見て貰いたいのかい、お龍さんよ」

お龍は力なく首を振ろうとするが、吊られていてはそれも叶わなかった。

「まあ、その間にこっちとしては色々楽しめるからいいんだけどね」

お銀はそう言うと親分と相模屋の方を振り返ってニヤリとした。

「じゃあ、まずは肌襦袢を脱いでもらおうか。誰か後ろに回って腰を支えておくれ」

若い衆が後ろからお龍の腰を支えると、お銀は肌襦袢の紐を解きはじめた。

「ヒィ」とお龍は悲鳴を上げたが、排尿は止まらない。

「おしっこしながら肌襦袢を脱がされるっていうのも乙なもんだろうね、お龍さんよ」

「あぁぁ、許して、あぁぁぁ」

お龍が嗚咽し始め、紐を解き終わったお銀は満足気に微笑むと、前身頃を大きく開いた。

「お龍さん!」とお京が呟いた。

着痩せする質と源太が言ったとおり、着物の上からでは想像も出来ない豊満な乳房がブルンと飛び出し、一瞬排尿が止まった。

「あぁぁ」

もう一声お龍が泣き、再び排尿が始まった。

そしてお銀は後ろへ回ると、開いた前身頃を後ろから両手で掴み、肩から一気に肌襦袢を剥ぎ取ったのである。

「いやぁ」とお龍が泣くと 同時に「おぉ」と皆がどよめき、またも排尿が止まった。

お京は涙を流すだけでもう声も出なかった。

「予想以上の良い身体ですな」と相模屋が親分に耳打ちした。

恥ずかしさの為か白い肌は全身紅潮し、ハーハーと荒い息をする度にはち切れそうな乳房が上下する。二の腕から肩に掛けての形の良い筋肉は剣術で鍛えられたものであろう。同じく鍛えぬかれたような腹部は見事に引き締まっているが、うっすらと脂肪を載せていることで却って艶かしい。

脱がされた肌襦袢は縛られた後ろ手のところに絡まり、お龍の身体を覆うのは緋色の湯文字だけであるが、それも大きく絡げられて紅潮させた太腿はほとんど露わで ある。辛うじて湯文字が隠しているのは花瓶の口に多分接しているであろうと思われるお龍の局部だけである。

「あぁぁ」

再びお龍が泣くと、ジョロジョロと排尿が始まった。

「さあ、次は湯文字も取って素っ裸になるんだよ、お龍さん」

お銀が湯文字の紐を解きはじめた。

「あぁぁ、許して、それだけは」

「おやまあ、素っ裸になる覚悟で来たんじゃなかったのかい、お龍さんよ」

お銀は紐を解き終わると、上になっている左側の紐を引っ張りながら後ろに回った。あとはその手を離すだけで、湯文字は支えを失いお龍の身体から離れるのだ。

若い衆達がお龍の前に集まった。

「あぁぁ、いやぁ」

「ほら」

お銀が少し紐を緩めたので湯文字が少しずり下がり、お龍の臍が露わになった。

「ひぃぃ」

「臍を見せた位で、ヒィヒィ言ってると次が大変だよ」

「あぁぁ、いやぁ」

「それでは皆さん、お龍さんの宝物のご開帳ですよ」

「あぁぁ、許して、せめて、し終わるまで待って下さい」

「お前さんも、馬鹿だね。おしっこするところを見るのが面白いんだよ」

お銀はそう言うと、持っていた紐をゆっくりと離した。


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