肛宴のお龍

10.尿意切迫

再び座敷牢に戻された私は、手と足の縄を解かれて部屋の一番奥の隅に正座していましたが、目を瞑ると先程のおぞましい行為の数々がまざまざと蘇ってきます。それにしても源太さんの精液の量の凄まじさは想像を絶するものでした。食道では射精して下さらないだろうとは予想していましたし、あの体格にあの一物の大きさですから、かなりの量は覚悟していましたので、射精が始まったら口中には溜めずにすぐに私は飲み込んでいったのです。しかし次から次に射精される量は遥かに多くてとても飲み込みきれず、すぐに口の中が一杯になってきたのです。漏らさないようにと源太さんの一物を必死に 咥えていましたが、鼻から吹き出すのを止めることは出来ませんでした。そして粘っこい精液で鼻孔を塞がれてからは息が出来なくなり、 しばらくは我慢したものの、窒息死の恐怖を感じた私は源太さんの一物と共に口中に溜まった 大量の精液を吐き出してしまったのです。

もう一度源太さんとの口淫の機会を与えられたとしても、あれだけの量の精液を漏らさずに飲み干せるとはとても思えません。それにきっとお銀さんは次にはもっと酷いことを考えてくる でしょう。果たしてお嬢様を助け出せるものかと、私の自信はぐらつき初めていました。

そしてそんな私に追い討ちを掛けるように尿意が切迫してきたのです。先程、座敷からこの牢に連れてこられる途中で、私の縄を持っていた二人の若い衆にお願いしようかと思ったのですが、若い男性に向かって厠を使わせて下さいとは言いにくく、つい我慢してしまったのでした。

座敷牢の片隅にもしかして尿瓶でも置いてないかと見渡しましたが、そんなものはどこにもなく、春先と言えども日が暮れるとかなり冷え込んできて、足袋こそ履いているものの肌襦袢と湯文字だけの格好では肌寒くて一層尿意が募ってきます。きっと精液を飲み干す度に頂いたお水がいけなかったのです。少なくとも20人以上の方の精液を飲み干しましたから、小さな湯呑みと言えども20杯は頂いたことになります。

太腿をギュッと閉じて正座していても、益々尿意は切迫してきます。粗相しないうちにお願いしなくては。私はそろりと立ち上がると格子の側までゆっくりと歩を進め、もう一度正座すると外側で私を見張っている二人の若い衆を呼びました。

「何だい」と一人がぶっきらぼうに答えました。

「すみませんが、厠を使わせて頂けませんか?」

小さい声で私が聞くと、「何だって?」とその若い衆が大声で答えます。

「すみません、厠を」

恥ずかしさを我慢して精一杯の声を出しました。

「えっ?かわや?ああ、便所か。便所は無いよ」

「そ、それでは尿瓶か何かを。も、もう我慢が」

「尿瓶?そんなもの無いよ。明日になったら帰れるんだろう?それまで我慢しな」

「そ、そんな、もう本当に我慢が出来ないんです。お銀さんにお願いしてもらえませんか?」

「お銀姉さんが朝まで我慢させるように言ってたんだ」

「そ、そこを何とか、もう一度お願いしてもらえませんか?」

「ええぇ、面倒くせえなぁ。おい、じゃあ、お前見張っててくれよ。俺はちょっくらお銀姉さんに聞いてくらぁ」

「あ、ありがとう御座います」

私はほっとして額を畳に付けてお礼を言いました。これできっと厠を使わせて頂ける。


ところが小一時間経っても若い衆は戻って来られません。太腿をピタリと閉じて下腹部に力を入れていると一旦は尿意は治まりますが、しばらくするとさらに激しい尿意が襲ってきて、そんなことを何度か繰り返しているうちに、私はハーハーと荒い息をしながら、腰をもじもじ動かさずにはいられなくなってきていたのです。

「す,済みませんが、先程の方は?」

「あ、あいつかい?便所でも行ったんじゃないかな。あいつの便所は長いからな」

「そ、そんな、お銀様にはお願いしてもらえたのでしょうか?」

「そんなこと俺に聞かれたって分かんねえよ。あいつが戻ってきたら聞いてみな」

「あぁ、でも、私はもう、もう、我慢が、何とかお銀様に」

「そんなこと言われたって、見張りは俺一人しかいないんだから、俺が聞きに行く訳にはいかないだろう。無理を言うなよ」

「あぁ、お願いです」

今にも漏れそうなのを必死に堪え、私は土下座して必死にお願いしました。

その時です。何方かの足音が近づいて来たと思ったら、お銀さんが格子の外に現れました。

「厠を使わせろだって?」

「あぁ、済みません。お願いです。もう我慢が」

「詫びに来るんだったらそういうものは済ませてくるのが礼儀なんじゃないのかい、お龍さんよ」

「あぁ、本当に申し訳け御座いません。礼儀知らずのお龍をお許し下さいませ」

「礼儀知らずだけじゃないよ、大人の女が他所の家へ上がりこむなり厠を使わせろだなんて、恥知らずもいいとこじゃないのかい?」

「は、はい、そのとおりです。お龍は恥知らずの女です。ですから、お許しを」

「 そう言われてもうちには尿瓶なんてものはないし、お前さんに使わせてやれる厠は無いんだよ。外へ出てするんなら連れてやってもいいけど、そうも行かないんだろう?」

「そ、そんな、外でするのだけは」

「そうだろうよ、でもそこで粗相されても困るからね」

「ああ、お銀さん、では尿瓶の代わりになるものを、何でもいいのでお借り出来ませんか」

「それは駄目だよ、お前さんに何か渡すと何でも武器にしちゃうからね」

「いいえ、決してそんなことは。ですから何かお貸し下さい。でないと、ああ、もう、我慢が」

「分かった、分かった、お龍さんよ、安心しな、今、お前さんの為に仮設の厠を作ってるから。もう出来るはずだよ。ほら、若いのが呼びに来たよ」

すると本当に若い衆が一人現れて、「お銀姉さん、厠の準備が出来ました」と言ったのです。

地獄で仏とはこのことでしょう。

「あ、ありがとう御座います」

「じゃあ、厠へ連れてってやるから、さっきみたいに手を後ろで組むんだよ」

「は、はい」

私はすぐに後ろ向きになって格子の間から後手に組んだ両手を突き出します。若い衆がすかさず縄を掛けます。

「足もだよ」

「はいっ」

私は急いで両足を揃えると一番下の格子の間から出し、さっきと同じように間隔を少し開けて両足首が縄で括られました。

「じゃあ出ておいで」

こ、これで厠を使わせてもらえます。も、もう少しの辛抱です。

若い衆に後手に縛られた縄を持ってもらって私は座敷牢から出され、「こっちだよ」と言って廊下を歩いて行くお銀さんの後に続きました。太腿をきつく閉じていないと今にも漏れそうなので、とても小さい歩幅でしか歩けず、しかも時折身体が震えるのは防ぎようもありませんでした。


「ここだよ」とお銀さんがガラガラと引き戸を開けると、そこは薄暗い通路のようなところです。右側は薄汚れた壁で、左側は黒い幕が天井から張られていて、少し先に裸電球が一つ天井からぶら下がっています。

「ここは倉庫なんだけどね、お前さんの為に厠を作ったんだよ。さあ、入りな」

「あ、ありがとう御座います」

お銀さんに言われて私は薄暗い通路に入ります。後ろから後手に縛った縄を持った若い衆とお銀さんが付いて来られます。

歩くとギシギシと音を立てる板張りの通路は、5メートル程で左に直角に曲がっていて、そこは周りを黒い幕で囲まれた2メートル四方程の狭い部屋になっています。

ここがきっと仮設の厠なのです。私は安堵の溜息を漏らしました。

ところが床のどこにも厠らしき穴は開いていませんし、便器らしきものも置かれていません。

その代わりに部屋の真ん中には腰の高さ程の花瓶台が置かれ、その上には先の広がった硝子の花瓶が載っているのです。

私は振り返ると、「ここは厠じゃ……」とすがるような目でお銀さんを見つめました。

「そうだよ、それがお龍さんの為に作った特製の厠だよ。おしっこをしてるところを見られるのは恥ずかしいだろうから、私達はあっちで待っててやるけど、つばめ返しのお龍 さんだから油断は出来ない。だからお前さん一人にして、こっちも安心できる厠を考えたんだよ」

私は声も出せずに、もう一度花瓶台の方に振り向きました。漆塗りのような濃い茶色の美しい光沢をした花瓶台です。丸い30センチ程の台が腰の高さに三本の脚で支えられています。そしてその上には 美しい模様が彫られた硝子の花瓶が置かれています。細長い花瓶の高さは20センチ余りでしょうか。そして10センチ程の大きな口が開いています。

ま、まさかあの花瓶に……

「やっと分かったようだね、お龍さん。そのとおり、あの花瓶の中にするんだよ」

ということは立ったままで・・・。

「まずこの輪っかに首を通すんだよ」

するすると天井から縄が降りてきました。先には絞首刑に使うような輪が作ってあります。

「お前さんが逃げないようにね」

私は黙って輪に頭を通します。お銀さんが輪をギュッと絞って抜けないように調整します。

「これでよしと。次はそこのレンガだ。二つずつ花瓶台の左右に積んでおくれ」

若い衆がお銀さんの指図で部屋の隅からレンガを持ってきて、1メートル程離して二段に積み上げましたが、「縦じゃない、横向きだよ」と言われて、10センチ程の幅のレンガを横向きに置き直しました。

「お龍さん、そのレンガの上に乗るんだよ」

横向きに置かれたレンガは爪先を載せるだけの長さしかありません。しかし 私は黙って頷くと、白足袋の右足の爪先を右側に置かれたレンガの上に、そして左足を大きく開いて花瓶台を跨ぐように、その爪先を左側のレンガの上に載せましたが、それでも花瓶を跨ぐことは出来ません。それに こんなに脚を開くと一層尿意が募ってきます。

「爪先立ちになるんだよ」

お銀さんがそう言うと、首に掛かった縄が上に引っ張られ、私は慌てて爪先立ちになりましたが、未だ少し届きません。

「もう一つずつ積んでおくれ」とお銀さんが若い衆に指図します。

そしてお銀さんは私の腰を支えると、「右足を上げな」と言って、私がそろりと爪先立ちの右足を浮かせるとレンガが一つ積まれ、同じように左足の下にも一つレンガが積まれました。

これでちょうどぎりぎり花瓶を跨ぐ事ができ、湯文字を挟んで会陰部に花瓶の口が当たっています。

「これでいいかい?」とお銀さんが尋ねます。

「は、はい、でも、湯文字と襦袢を絡げて頂けませんか」

「本当に世話が焼けるね」

お銀さんはそう言うと、若い衆に指図して首吊り縄を少し引き上げさせてピンと張ってから、私の腰から手を放し、まずは肌襦袢をそして湯文字を絡げて下さいました。太腿が付け根付近まで露わになり、冷たい花瓶の口が会陰部に接します。しかし花瓶の位置が後ろ過ぎて、 これでは尿が花瓶の外側に飛び散りそうです。

「も、もう少し花瓶を前へ」

「これでどうだい?」

お銀さんが花瓶を少し前へずら して下さり、会陰部の前の方、普通の男性なら陰嚢のある辺りに花瓶の口が触れています。この位置なら間違い無く花瓶の中に排尿できるでしょう。

「あ、そこで大丈夫です」

「本当かい?見てあげようか?」

「い、いえ、本当に大丈夫です」

どうせ後で身体の隅々まで見られるとは分かっていても、少しでも先に延ばしたいのが女心です。

「分かってるだろうけど溢すんじゃないよ。それと逃げようとして足を踏み外したら首吊りだからね。そのままの格好で大人しくするんだよ」

「は、はい」

「じゃあ、私達はあっちで待ってるから、終わったら呼びな。チリ紙も持って来てやるからね」

「あ、ありがとう御座います」

お銀さんと若い衆は本当にその小さな部屋から出ていって下さいました。排尿の音は聞かれるかもしれませんが、間近で見られることに比べれば恥ずかしさはずっとましです。

「はぁぁぁ」

私はやっと小さな溜息を付き、身体の緊張を解きました。

「一つ言い忘れたけど」

後ろの方でお銀さんの声がして、私は再び全身を強ばらせました。

「は、はい、何でしょう」

「この部屋は倉庫だから、向こうの入り口から誰か入って来て電気を点けるかもしれないけど、大人しくしてれば気づかれないから」

「は、はい」

黒い幕の向こう側に誰かが入ってくるかもしれないなんて。そんなことになればきっと排尿の音が聞かれてしまいます。早く済ませてしまわないと。

しかし、そんなことを想像した途端に、私の小さなペニスが少し勃起してきたのです。 と言っても会陰部の割れ目から少し顔を出した程度ですが、それでも角度が変われば花瓶の中に入らないかもしれません。 私は何とかペニスを落ち着かせようと、ゆっくりと息を吐きました。

「はぁぁぁぁぁ」

ところがその結果として、今にも爆ぜそうだった膀胱から暖かいものが降りてきたのです。

未だ駄目!

必死に下腹部に力を入れ、私はギリギリのところで排尿を止めました。

「くぅぅぅぅ」

勃起して角度を変えたペニスから飛び出す尿が花瓶の口を遥かに越えて花瓶台や床に飛び散るところが目に浮かびます。

「あぁぁぁ」

思いっきり頭を振ってこんな思いを振りきりたいのに、後手に縛られたつま先立ちでしかも首を吊られていては、身体をくねらせることすらできません。

落ち着いて、お願いだから落ち着いて、私の可愛いいペニス。

しかし、ペニスは相変わらず少し勃起したままですし、尿意はとっくに限界を越えています。

「あぁぁぁ」

もう少し後ろに下がらないと。そうすれば少し勃起していても尿は花瓶の中に入るはず。

私は身体の平衡を崩さないようにと、左右の爪先を少しずつ捻りながら後ろにずらせました。脚を開いたままで、そんな動きをするだけでも尿道の中を少し暖かいものが流れた気がします。

「いぃぃぃぃ」

しかし、そこからほんの少し、多分1センチにも満たない程わずかに左足の爪先をずらせた時、私は危うくレンガを踏み外しそうにな ったのです。そうです、レンガは横向きに置かれているので、前後にはほとんど足をずらすことなど出来ないのです。

「クククッ」

ギィという音がして首に縄が食い込みます。後手に縛られた両手をもがき、右膝を曲げながら必死に体勢を立て直します。

「ふぅぅぅ」

何とか首吊りにならずに済みましたが、今の衝撃で暖かいものがさらに降りてきました。

ああ、このままでは漏らしてしまいます。

「あぁ、あぁ」

もう、お銀さんを呼んで花瓶の位置を動かしてもらうしかありません。勃起したペニスを見られるかもしれませんが、尿を溢してしまうよりは。

私は観念してお銀さんを呼ぼうとしました。

「お、おぎん・・・」

しかし、もう手遅れでした。

暖かいものがペニスの中を流れ、もうどんなに頑張っても止めようがなく、とうとう先から溢れだしたのです。

お願い!花瓶の中に入って!

私は必死に耳を澄ませます。

辺りはシーンと静まり返り、ペニスから尿が溢れる感覚だけで音は聞こえません。

ああ、これなら花瓶台には飛び散っていないようです。

そしてすぐにチョロチョロと花瓶の中に液体が溜まる音がし始めたのです。きっと少しだけ勃起が収まったのでしょう。

ああ、良かったです、何とか花瓶の中に入りました。そして私は安堵のあまり、「あぁぁ、あぁぁ、あぁぁぁぁぁ」と嗚咽を漏らしてしまったのです。

それからしばらく尿がチョロチョロと流れるのに任せていると、ペニスの勃起も随分落ち着いてきて、私は「はぁぁぁぁぁぁ」と大きな溜め息を付きました。

これでももう大丈夫です。

ところが今度は、ジョロジョロ、ジョロジョロというかなり大きな音がし始めたのです。

「ヒィッ」

思わず悲鳴が出て排尿が止まってしまいました。

それまで花瓶の壁に音もなく当たっていたのが、ペニスの勃起が収まった為に、底に溜まっている尿の上に落ちるようになって派手な音を立てているのです。

「あぁぁぁ」

しかし、聞かれるのはお銀さんともう一人の若い衆だけ。お二人は当然そんな音が聞こえるのは百も承知でしょう。

私は「ふぅぅぅ」と息を吐きながら、再び緊張を解きました。

再びジョロジョロ、ジョロジョロという音が響きます。

ああ、早く終わって。

ところが、いつもなら勢い良く出る尿が依然としてほんの少しずつしか流れ出しません。きっと最後の一歩の緊張が解けないのです。後手縛りの爪先立ちで首を吊られているという格好の所為でしょうか。これでははち切れそうな膀胱が空になるには相当の時間が掛かりそうです。

もっと緊張を解かなければ。

目を瞑ればもう少し落ち着けそうですが、目を瞑って身体の平衡を崩せば首吊りになるので恐ろしくて目は瞑れません。仕方なく私は僅かに薄目を開けて、ゆっくりと深呼吸を始めました。

尿は依然としてジョロジョロ、ジョロジョロという音を立てて花瓶の中に落ちています。

その時です。

黒い幕の向こう側の引き戸が開く音がしたと思ったら、天井と黒い幕の間のわずかの隙間が明るくなりました。向こう側の照明が点灯したのです。そして人の気配が。

「ヒッ」と小さな悲鳴が出て、また排尿が止まってしまいました。

ああ、早く用事を済ませて出て行って。

ところが、出ていくどころか、次第に人数が増えているようで、いくつもの足音がしますし、ぼそぼそとした話声まで聞こえてきます。

「はぁぁぁ」

思わず喘ぎ声が出てしまいました。すると黒い幕の向こう側の話し声が止み、足音も止まります。まさか喘ぎ声を聞かれたのでしょうか。

私は息を凝らして尿意に耐えます。

しかし、排尿の途中で止めているのですから、そんなには我慢出来ません。

黒い幕の向こう側もシーンと静まり返っています。きっとこちらで何かしているのを感づかれたのです。

「あぁっ」

尿意が切迫して、また喘ぎ声が出てしまいました。そして必死になって耐えた時に、首を吊っている縄がギーっと大きく鳴りました。

ああ、きっと音を聞かれました。

「おい、そっちに誰かいるのかい?」

黒い幕の向こう側から若い衆が尋ねます。

ああ、どうしたら良いのでしょう?お銀さん、返事をして下さい。

でも後ろの方にいるはずのお銀さんも、もう一人の若い衆も何も言いません。

「誰かいるんだろう?」

「は、はい、お龍です」

「お龍さんだけかい?」

「お銀さんも一緒だったのですが、今は私だけ」

「そんなところで一人で何をやってるんだい?黒い幕なんか張りやがって」

「そ、それは」

「言えないのかい?言えないんなら、幕を開けるぜ」

「あぁ、それだけは」

「うるさい、嫌なら、言うんだよ」

「か、厠を」

「厠がどうしたんだ」

「厠をお借りしているんです」

「そんなところに厠なんか無いはずだ。嘘を言いやがって」

「いえ、本当なんです。今も使わせて・・・」

「それじゃ本当かどうか確かめてやる」

「ああ、いやあ、待って下さい」

少し大きな声を出した途端に再び排尿が始まってしまい、ジョロジョロ、ジョロジョロという大きな音が響きます。

「あぁぁぁぁ」

そしてガラガラと上のほうで音がすると、私の右後ろから黒い幕が開き始めたのです。

「あぁ、いやぁ」

すぐに私の右側が明るくなり、幕が開くにつれて何人もの方がこちらを見ているのが視野の隅に見えます。

「いやぁ!」

必死で下腹部に力を入れ、何とか排尿を止めることが出来ました。

しかし黒い幕は動きを止めず、既に正面からも何人もがこちらをじっと眺めています。

「あぁ、いやぁ」

しかし私は顔を隠すことも、身体を捻ることも出来ずに、後手縛りの爪先立ちで 脚を拡げ、花瓶を跨いで排尿している格好を大勢の視線に晒し続けたのです。


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