肛宴のお龍

2.出陣

将吉親分と別れの杯を交わした後、私は湯殿を使わせてもらい身体を清めることにしました。お嬢様の身代わりなる為に女の私が東組に乗り込んで行くのですから、間違いなく真っ先に衣類は剥がれるでしょう。その時に、長旅で汗ばんだ身体を晒したくないという、この期に及んで不可解な美意識とでもいうのでしょうか、そんなものが私の身体の中から沸々と湧き起こってきたからでした。

その後に起こるであろうことは大体想像が付きます。厳しく縛り上げられての折檻、そしてさらに東親分の、いえそれだけでは済まず、大勢のやくざ達の慰みものにされるのでしょう。今まで一度も誰にも抱かれたことのないこの身体を。

私は湯船の中で自分の身体をギュッと抱きしめました。

しかし、待って下さい。彼らは私がふたなりであることは未だ知らないはず。その事を知った彼らは一体どんな風に私を責めるのでしょう。

いつの間にか私の右手はアヌスを弄っています。毎晩のように細い張形で慰めてはいるものの、男性のものを受け入れたことはもちろん一度もありません。今まで一人の男も受け入れたことのないこの身体を、あんな無法者達に蹂躙されるかもしれない、始めての男がもしかして東組の組長になるかもしれないと思うと、今まで何度かあったお誘いをどうして思い切って受け入れなかったのかと、後悔の涙が頬を伝います。でも折角私に思いを寄せていただいた方に、女の身体で無いことを知られるのは私には耐えられなかったのです。

「ほぉ」

自分の喘ぎ声で我に返ると、知らぬ間に右手の中指は根元までアヌスに入っています。張形を持ってくれば良かったわと苦笑いしながら、一旦中指を抜いて人差し指と一緒にしばらく口に咥え、ヌルヌルになった二本の指をまとめてアヌスに挿入します。

「あぁ」

いつの間にか左手は豊満な乳房を優しく揉み、指先が乳首をきつく挟みます。そして太腿をギューッと閉じたまま、アヌスに挿入した右手を激しく抜き差しするうちに、身体の奥深くから劣情が高まってきて、ついには私は身体をブルブルっと震わせて気をやりました。

「ふぅぅぅ」

世間一般の女性からすればこんなのは気をやったうちには入らないのかもしれません。声が出るわけでも身体が硬直するわけでもないのですから。

でも私にはこれで十分なのです。

ゆっくりと右手をアヌスから抜いたあと、もう少し左手で乳房を愛撫してから、そろりと太腿を開きます。そして左手を下ろしてクリトリスの包皮を剥 くと、十分感じた証拠に、そこが愛液でしとどに濡れているのです。

可愛らしい小さなペニス。もちろん女性の身体に挿入したことは一度もありませんし、もう何年も射精したこともありません。でも私が感じると透明な愛液を先から滴れますし、愛撫してあげれば少し勃起して恥ずかしい姿を露わにするのです。

今も、左手で弄っているうちにクリトリスが固くなってきました。もしかして東組のやくざ達はこのクリトリスをも責めるのでしょうか。しばらくの間、私は目を瞑って心地良いお湯に浸かりながらクリトリスを弄っていました。もしかして自分の手で愛するのは最後かもしれないと、いつも以上に優しく念入りに愛撫をしますが、射精という終わりがないので切りがありません。

もう十分ねと自分に言い聞かすと私は「ふぅうううう」っと一度大きく息を吐き、湯船を出て洗い場にしゃがみました。そして冷水を何度か身体に浴びせて劣情を鎮め、きつく絞った手拭いでしっかりと全身を拭いました。

女侠客のお龍に戻った私は脱衣場に出ると、緋色の湯文字を腰に巻き、晒しの肌襦袢を着てから真っ白の足袋を履き、純白の半衿の付いた薄桃色の長襦袢に袖を通しました。姿見に写しながら腰紐を締めて背中やお尻のしわを丁寧に伸ばし、最後に 少し濃い桃色の伊達締めをします。そして部屋に戻って鏡の前で化粧を直し、乱れた髪を夜会巻きに結い直しました。着物は裾に紗綾形模様が入った薄紫の訪問着です。太腿あたりには木の実をあしらった金の刺繍が斜めに走っています。お嬢様の祝言の時に着ようと持ってきた訪問着を身代わりになる為に着ることになろうとは。

仕上げには漆黒に金の模様の入った帯を締めます。そして成人した時に将吉親分から頂いて以来ずっと愛用してきた黒漆塗りの懐剣を胸元に刺します。鞘には西組の家紋が入っており、いわば私のお守りでもあるのです。今夜は懐剣を使って争うつもりは毛頭ありませんが、もしもの時には自害することも考えてのことです。そして念の為に仕掛け簪を整えたばかり髪に刺し、帯とお揃いの漆黒の小物入れを手に持って、親分と女将さんに簡単に挨拶をすると 、見送りは断ってから訪問着に合わせた薄い紫色の草履を履き、静かに玄関から外へ出ました。

日は大分傾いていますが、春先の心地良い風が頬を撫で、庭の桃の木から落ちた沢山の花びらがまるで私を励ますように足元で舞い踊ります。

古めかしい門をくぐって表通りに出ると、通りの向かいに佇んでいた二人組みが突然走り去りました。どこかで見た顔だと思ったら、昼過ぎに町外れの食堂にいた二人です。私が入っていくと、驚いたように店を飛び出していったので覚えています。きっと私が町に戻ってきた事を組に伝えに走ったのでしょう。その後の東組の行動の素早さは敵ながらあっぱれです。私が二三所用を済ませている間に、お嬢様を誘拐し、私を身代わりにという手紙まで西組に届けたのですから。今頃は東組では大騒ぎで私を待ち受ける準備をしているのに違いありません。


inserted by FC2 system