エピソード I 〜 ローラ

16.見知らぬオンナ

僕の人生で最も思い出に残る週末は終わり、実験に明け暮れる日々が再び始まりました。でも今までと違うのは、僕にはローラがいると言うことです。もちろんラボでは二人は今まで通りの大学院生と指導教官という関係ですし、僕たちのことは未だラボの連中には内緒ですが、目ざとい女子学生たちはローラが一段と美しくなったことに気付いて色々と探りを入れてきます。

そしてTGであることのコンプレックスから脱したローラは僕好みの上品ながらセクシーなドレスを着てくれる ようになったのです。もちろん僕も安月給ですから高価なドレスを買ってあげることはできませんが、長身の上に素晴らしいプロポーションのローラがシンプルなレギンズとトレーナー姿で歩くだけで皆が振り返るのです。

冬と言えども日中はポカポカ陽気の日が多い南カリフォルニアです。そんな週末には身体にピッタリした薄手のセーターに股下のほとんど無いホットパンツを穿いてもらい、ショッピング・モールの人混みを一緒に歩きます。最初は恥ずかしがっていたローラですが、段々と自分に注がれる視線が快感になってきたようで、胸を張り、太腿を付根から露わにして ハイヒールで堂々と闊歩するのです。

そして夜はローラのアパートで一緒に過ごします。ウィークデーは実験のスケジュールも異なるし、二人とも家に帰っても勉強しないといけないので夜も大体は別々に過ごしますから、余計に週末が待ち遠しいのです。

ほんのちょっぴり露出の快感を楽しんで高ぶったローラはアパートに着くなり僕に抱きつき、そんなローラを焦らしながらいつの間にか僕も夢中になってローラの唇を吸うのです。 ローラは正常位が好きなようで、しかも僕にペニスを弄られて一緒に絶頂に達することで より一層満たされるようです。少し前までペニスで感じることに嫌悪感を持っていたことからすると随分と変わりました。

それだけでなく、今では僕が頼むと、オナニーで射精するところまで見せてくれるようになったのです。 全裸でベッドに横たわり細い指でペニスを握り、ぎこちなく刺激をするうちにローラのペニスは少しずつ勃起します。そして徐々に喘ぎ声が大きくなり、遂には僕の目をじっと見つめながらお腹の上に射精してしまうのです。

夢のような週末はあっと言う間に終わり、また新たな一週間が始まります。昼間はローラと一緒にラボに居るのでまだ良いのですが、夜になって一人でアパートに帰るとローラのことが思い出されて仕方ありません。瞼を閉じるとローラが全裸で横たわり、僕を見つめながら細い指でペニスを弄るのです。そしてローラが裸身を震わせ、大きく喘ぎながら射精してしまうと、いつのまにか僕も 自分のペニスを握り締めているのです。

「ローラ、愛してるよ」

喘ぐように呟いて再び目を閉じると、今度は別のオンナが全裸で髪を振り乱しペニスを握りしめています。

『誰?』

オンナがゆっくりとこちらを向きます。

知らない顔の美人です。でもどこかで見たような。

オンナは僕を見つめながら右手で一心不乱にペニスを弄り、そして左手で乳房を愛撫しています。

『誰なの?』

オンナは快感に喘ぐ顔を左右に振りながら必死で僕を見つめ、そして呻くように囁きます。

『私よ、マイク、あなたも良く知ってる筈』

そしてオンナは裸身を震わせながら勢い良く射精してしまい、精液がオンナの腹部にそして乳房に飛び散ります。

『えっ、誰?僕の知ってる人?』

僕が聞き返したときにはオンナの姿は既に消えていました。そして僕は自分も射精してしまったことに気付いたのです。

* * * * * *

翌日になると僕はすっかりオンナのことは忘れてしまっていて、昼間はラボでローラと楽しく過ごしたのですが、夜になってアパートに戻ると再びオンナが現れたのです。

ローラが着ていたのと同じセーターにホットパンツ、それにハイヒールを履いて僕の前を歩いています。同じ服装ですがローラ程背は高くないし、ブロンドじゃなくて黒髪なのでローラではないことはすぐ分かります。それでも引き締まったふくらはぎや良く発達した太腿、それにホットパンツを貼り付けたようなお尻はとても魅力的で、僕は思わず見入ってしま います。

僕の視線に気が付いたのかオンナは振り返り、じっと僕を見つめると何とセーターを脱ぎはじめたのです。ブラは着けておらず、露わになった小ぶりな乳房を両腕で抱くように隠しながら 尚も僕を見つめます。

『誰なの?』

『あなたの知ってる人よ』

オンナはそう言うと乳房を抱いていた両手を身体の横に下ろし、親指をホットパンツの上端に引っ掛けてそのまま脱ぎ始めるのです。

ホットパンツの下にはTバックすら穿いておらず、小さなペニスが現われます。

ハイヒールだけの全裸になったオンナは脚を肩幅に開くと右手の指で小さなペニスを摘まんで前後に擦り始め、左手で乳房を揉み始めます。オンナの喘ぎ声が大きくなるにつれてペニスも勃起し始め 、オンナは快感に耐えるように顔を左右に振りながらも僕を必死に見つめています。そして遂に絶頂を極める時にも開いた脚を閉じることなく、太腿から身体全体を震わせながら僕に向けて激しく射精したのです。

「ウッ」

そして僕はまたしてもオンナと一緒に射精してしまったのでした。

翌日になってもオンナのことは僕の頭から離れません。ラボでローラと話していても、ローラとオンナが重なるのです。

一体あのオンナは誰なんだろう。

夜になってアパートへ帰っても、目を閉じるとオンナが出てきそうなので僕は論文でも読もうとしました。でも頭の中はあのオンナのことで一杯で、文章は一つも頭に入ってきません。

仕方なく僕はシャワーを浴びることにして服を脱ぎ、バスタブに入ってシャワーカーテンを閉じます。湯温を調製した後、シャワーヘッドから勢い良くお湯を出します。

そして頭からシャワーを浴びようと目を瞑った瞬間、またしてもオンナが現れたのです。漆黒のTバックビキニ姿のオンナは脚を肩幅に開いて見事に引き締まったお尻をこちらに向け、 両手を腰に当てて遠くを見つめているようです。ストラップレス・ブラを留める蝶結びが背中で、そしてウエストの両側ではTバックの横紐の蝶結びが僕を誘惑しています。

『そんなことをしてはいけない!』

僕の理性が必死に制止しますが、僕の欲望の力は遥かに強く、気が付いたときには僕の右手は背中の蝶結びを、そして左手はTバックの蝶結びを摘まんでいたのです。

右手が踊り、左手が翻った時にはブラはバスタブの底に落ち、Tバックは左半分の支えを失い辛うじてお尻の右側に絡みついています。そして右手がTバックの右側の蝶結びを解くと、 完全に支えを失ったTバックはスルリとオンナの身体から離れました。

『これ以上は絶対に駄目』

僕の理性が叫んだ時には既に僕は左手でオンナの乳房を掴み、右手はオンナの股間に伸びていました。そして勃起していないオンナのペニスを右手が掴んだ瞬間、僕も誰かにペニスを掴まれた気がして思わず喘いでしまったのです。

「ぁああ」

「ァアア」

オンナも僕に乳房とペニスを掴まれて喘ぎますが、抵抗する様子はありません。それどころかオンナは徐々にペニスを勃起させるのです。

僕は後ろからオンナを抱きしめながら夢中でオンナの乳房とペニスを刺激し、同時に誰かが僕のペニスと、そして胸を愛撫するのです。

僕の弱点を知り尽くしたかのような手の愛撫で僕はあっというまに射精寸前まで追い込まれます。

「ぁああ、もうイキそう」

そしてオンナのペニスも最高に勃起し、「私もイキそう」とオンナは呻くように喘ぐのです。

「一緒に」

僕がやっとそれだけ言うと、僕のペニスは熱い手に先まで包まれ、僕もオンナのペニスを抱くように包みます。そして、僕が熱い手の中に射精すると同時に、僕の手に抱かれたオンナのペニスもドクンドクンと脈打ち、熱い精液を迸らせたのです。

崩れるようにオンナはバスタブの中で四つん這いになり、シャワーがオンナの背中にそしてお尻にかかります。

「一体君は誰なの?」

オンナは黙って振り向くと、右手を後ろにまわしてお尻の割れ目を開きます。

「ここを」

「えっ?」

オンナの右手が開いたお尻の割れ目の奥には美しいアヌスが固く口を閉ざしています。

「私の中指の先を見て」

「ええっ、中指の先に何かあるの?」

呟きながら僕は跪いて綺麗な中指の先に顔を近づけます。

「あっ、これは!」

僕は慌てて立ち上がるとシャワーカーテンを開けてバスタブを飛び出し、引き出しから小さな鏡を取り出します。そしてその場にしゃがむと鏡を股間に伸ばしたのです。

鏡には見慣れた僕のアヌスが映っています。そしてアヌスのすぐ傍には、オンナの中指の先にあったのと瓜二つの、見慣れた二つの小さなホクロが 恥ずかしげに頬を寄せ合っているのでした。

「分かったでしょ?」

オンナの声に驚いて僕が振り返ると、濡れた裸身を拭こうともせずにオンナが腰に両手を当てたまま僕を見下ろしています。

「君は・・・」

「そう、私は・・・」

「僕?」

「そうよ、私はあなた。正確に言うとあなたの願望の化身」

あまりにも見事に僕の秘密を言い当てられ、僕はすぐに言葉を返すこともできずその場に座り込んでしまいました。

そして何度か深呼吸をするとやっと少し落ち着いてきました。

「た、確かに僕には女性化願望があるかもしれない。でも僕は今のままで満足だし、ローラを愛してるし・・・」

オンナが右手を前に伸ばして手のひらを僕の方に向けて僕がそれ以上話すのを制止します。

「そうかしら?確かにあなたはローラをとても愛してるわね。でもローラの存在はそれだけかしら?」

「他に何か?」

「愛の対象だけじゃないでしょ?」

「分からない」

「教えてあげましょうか?」

オンナの自信ありげな口ぶりに、僕は このオンナはきっと全て知ってるんだと確信しました。

「い、いや、待って」

「白状する?」

オンナは僕の目をじっと見つめながら、目の前に跪き、僕の右手を取ると自分の乳房に触れさせます。

「さあ、白状しなさい、本当のことを」

「本当のこと」

「真実を」

そう言うとオンナは僕の左手を自分のペニスに導いたのです。

「ぼ、僕は」

「僕は?」

オンナが優しい目で僕を見つめます。

「ぼ、僕は、ローラのようになりたい!」

バスルーム中に響く自分の声で我に返った僕の前にはオンナの姿はもう無く、シャワーがバスタブの底を打つザーザーと言う音だけがいつまでも続いていました。

* * * * * *

『ローラのようになりたい』

心の奥深くに潜んでいた願望をオンナによって引きずり出された僕がローラを見る目は、当然のことながら変わりました。ローラを愛していることには変わりありませんが、同時にローラは僕 の願望の対象にもなったのです。でもそんなことはローラにはとても言えず、僕は今まで通りローラとの関係を続けていたのです。

オンナはウィークデーには毎晩のように現れ、これでもかと言うほど 僕の潜在的な、いえ今となってはもう顕在化した願望を目の前に見せてくれます。それでも僕はローラには言えませんでした。

季節感の無い南カリフォルニアでも冬は雨季なので意外によく雨が降ります。でもイースターが近づくと天気の良い日が多くなり、春がやってきた ことを実感するのですが、それと共に昼間でもオンナは現れるようになったのです。

ラボで考え事をしていると、実験をしているローラの隣にそのオンナが立ち、二人は顔を付き合わせて何事か話したかと思うと、声を上げてお互いの身体を軽く叩きながら笑います。そしてオンナの腕がローラの腰を抱き、ローラの腕がオンナの肩を抱き寄せ、二人は顔を向き合わせると唇を合わせるのです。

「ローラ!」

思わず僕がローラを呼ぶと、オンナの姿は消え、「何?マイク?」とローラが振り返ります。

「ああ、いや、実験はうまく行ってるかい?」

「ええ、順調よ」

「それならいいけど」

ローラは不思議そうな顔をして実験台に向き直り、僕は「フゥー」と溜め息を漏らします。

そしてとうとうオンナは週末にも現れたのです。

まるで真夏のように暖かい土曜日、ローラと僕はサンタモニカ・ピアを散歩し、ピアの一角のカフェテラスで遅い昼食を食べていました。夏を待ちきれない女の子達がビキニで闊歩していますが、僕にとっては タンクトップと短いショーツに身を包んだローラの 方がずっと魅力的です。テーブルには大きなパラソルが付いていますが、午後の日差しはパラソルを避けるようにローラを煌々と照らしています。長いブロンドを後ろで束ね、大きな黒いサングラスをかけたローラがレモネードをストローで吸い、ピンク色の唇を軽く開けたかと思うとフッと息を吐いて微笑みます。

「お手洗いに行ってくるわね」

「ああ」

僕はアイスティーをストローで少しずつ飲みながら、レストルームへ向かうローラの後姿が人混みに消えるまでぼんやりと眺めていました。

しばらくすると人混みの向こうからローラがこちらへ向かって来るのが見え、僕は思わず手を振ろうとしましたが、隣に女性が居るのに気付いてその手を降ろしました。隣の女性もかなり背が高いので遠目にも良く見えるのです。二人はなにやら楽しそうに話をしながら近づいてきます。

友達にバッタリ出会ったのかな?

ところが二人が近づいてくると、ローラは先ほどのタンクトップとショーツ姿ではなくてビキニに着替えているではありませんか。しかもいつか僕が買ってあげたTバックビキニに似ています。

もちろんTバックかどうかは前からでは分かりませんが、きっとトイレで着替えて僕をびっくりさせようというのでしょう。

僕はローラのそんな悪戯心が嬉しくて思わず頬を緩ませてしまい、照れ隠しの為にひとしきりアイスティーを吸いながらローラを見つめていましたが、何と隣の女性も同じ色と形のビキニではありませんか。

へーぇ、偶然とは恐ろしいな。

しかし次の瞬間、それが偶然では無いことが分かったのです。

ローラと並んで歩く女性は、あのオンナだったのです。

二人は互いのウエストを抱くように身体をくっつけて歩いてきます。もうはっきりと二人の全身が見通せます。何度も目に焼きつくほど見たローラの裸身は言うまでも無く素晴らしく官能的で、豊満な乳房がブラに支えられて揺れています。そして鋭角に切り込んだビキニ が辛うじてペニスを隠しています。

そしてローラと抱き合いながら歩いてくるオンナも乳房こそローラ程ではありませんが、引き締まった腹部からお尻、そして良く発達した豊かな太腿は男性の視線を引き付けるのに十分です。

二人は僕のすぐ近くまで来ましたが、ローラはまるで僕が目に入らないかのように通り過ぎていき、オンナは一瞬顔をこちらに向けると僕に向かって口を動かしたのです。

『今日中に告白しなさい』

声は聞こえませんでしたが、言葉ははっきりと分かりました。

今日中だなんて、まだ心の準備ができてないよ。

言い返すこともできず僕は二人の後姿を見つめています。やはり二人とも細い紐のTバックです。しかも歩きながら、まるで愛撫するように互いのお尻に手を伸ばしているのです。

僕は二人が再び人混みに消えるまで、ただぼんやりと眺めていました。

「お待たせ、マイク!」

突然後ろからローラに声をかけられて僕は我に返りました。

「知ってる人?一生懸命見てたみたいだけど」

振り返ると、先ほどのタンクトップとショーツ姿のローラが微笑んでいます。

「い、いや、人違いだった」

僕は顔を歪ませて無理に微笑みながら答えましたが、もちろん告白なんてできません。

その後も、いつ再びオンナが現れるかもしれず、僕はいつものようにデートを楽しむことはできませんでした。

夕方になって一緒にローラのアパートへ帰り、そしてローラの手料理を 食べ、食器類を片付けた後、僕達はリビングでワインを飲みながらくつろいでいました。 しかしローラを見つめながら話していても、頭の中はオンナの事で一杯なのです。

今日中か。

「チーズを少し切ってくるわね」

ローラが立ち上がってキッチンへ向かいます。ワインのおつまみにしようというわけです。

冷蔵庫を開ける音がし、しばらくしてバタンと扉がしまり、今度はキッチンの引き出しをあけてナイフを取り出す音がします。

あれ?

ローラが誰かと話している声がします。

「ローラ、お客さん?」

ローラは聞こえないのか、話を続けています。しかも甘えるような声を出して。

「ローラ?」

僕もキッチンの方へ行こうと立ち上がりました。

ローラが話している相手は女性のようです。そしてローラとその女性がキッスをする音までが聞こえて来るのです。

「ローラ?」

そして僕がキッチンを覗き込もうとした時、ローラとオンナが手を繋いでキッチンから出てきたのです。ローラはいつの間に着替えたのか薄手のピンク色のガウンを着ています。そしてオンナは同じデザインの水色のガウン姿です。

二人は僕に気が付かないようで、そのままリビングを横切って寝室へと入って行きます。

寝室へ入るとローラはオンナを抱き寄せて口付けをした後、オンナのガウンを脱がせます。オンナはガウンの下には何も着けていません。全裸になったオンナはベッドに上がり仰向けになると大きく脚を開きます。ローラもガウンを脱いで全裸になると、ベッドに上がってオンナの脚の間に膝立ちになります。

オンナが膝を抱えるように曲げてお尻をローラに向けると、いつのまにかジェルをタップリと載せたローラの指がオンナのアヌスを捉え、オンナが僕の方を見ながら大きく喘ぎます。

そしてローラが腰を落としながらスキンを付けたペニスをオンナのアヌスに当てると、オンナは身体を反り返らせて喘ぎ、そのままローラがさらに腰を落とすとオンナは顔を左右に振りながら大きな喘ぎを漏らすのです。

「ああ、もう止めてくれ!」

ローラとオンナが同時にこちらを向きますが、僕はそのまま寝室を飛び出してキッチンへ向かいます。

「ローラ!」

チーズを切っていたローラが微笑みながら僕を見つめます。

「どうしたの、マイク」

「ローラ、聞いてくれ。真剣なんだ。ぼ、僕もローラのようになりたい!」

「私のようにって?」

「TGに」

「まあ、マイク」

ローラはナイフを置くと僕に駆け寄りギュッと抱きしめてくれます。

「良く言えたわね、マイク。私、もしかしてっと、ずっと思ってたのよ」

ローラは次第に涙声になりながら僕を抱きしめます。

「ああ、ローラ、ありがとう、ありがとう」

僕の目からも涙がポロポロと零れます。

「あっ、ちょっと待ってて、ローラ」

僕は慌てて寝室へと駆け戻ります。

水色のガウンを着たオンナが一人でベッドに腰掛けていて、僕に気付くと顔を上げました。

「やっと言えたのね」

「ありがとう。君のお陰だよ。ところで君の名前は?」

「私の名前?」

僕は黙って頷きます。

「私はジーナよ」

「ジーナか。いい名前だね。ジーナ、ありがとう」

「頑張ったのはあなたよ、マイク」

そう言うとジーナはニッコリ笑いました。

「マイク、どうしたの?急に寝室に来たりして」

ローラが僕を後ろから抱きしめます。

「いや、別に。ちょっとベッドが気になって」

「まあ、今朝ベッドメークしたつもりだったのに、御免なさいね。きっと慌てて忘れたのね」

ローラは恥ずかしそうに微笑むと、シーツを引っ張ってベッドの下に折込み、枕の位置を直します。

そんなローラの後姿を見つめながら、僕は微かに漂っているジーナの残り香を胸一杯吸い込んだのでした。

{エピソード I 完}


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