エピソード III〜 静子

22.甘美な計画

「フゥーーー、いつ聞いても静子さんの話は興奮するわね」

岡田夫人は大きく溜息を付いてから、立ち上がるとキッチンの方へ行きました。

「ちょっと早いけどワインでも飲みましょう。しらふじゃ聞いてられないわ」

「私もお手伝いしますわ」

「じゃあ、チーズでも切って下さる?冷蔵庫の扉の方にゴルゴンゾーラが入ってるから。私はワインを取ってくるわ。赤がいい、それとも白?」

「私はどちらでも」

「じゃあ、シャルドネにしましょう、まだ外も明るいし」

静子がブルーチーズを切って皿に並べ、フォークとワイングラスを二つずつトレイに載せてリビングに戻ると、ちょうど岡田夫人がシャルドネのボトルを持ってワインセラーから戻ってきました。そして慣れた手つきでコルクを抜くと二つのグラスにシャルドネを注ぎます。

「じゃあ、静子さんとドリーさんの初体験を祝って乾杯!」

「まぁ、そんなこと」

静子は顔を少し赤らめながらも嬉しそうに岡田夫人とグラスをあわせ、よく冷えたシャルドネをゴクンと飲みました。

「それで、それからどうなったの?あなたが上になったのでしょ?」

「えぇ、あとはごく普通の・・・」

「それでドリーさんはちゃんと射精したのね」

「えぇ」

「あなたもイッタの?」

「えぇ」

静子は俯いて小声で答えます。

「どんな感じなの、TGの女性とのセックスって」

「不思議な感じです。身体は完全に女性なのにペニスだけはホンモノでしょ?だからダブルディルドで愛し合うのよりもずっと彼女の身体を感じられるような気がするんです」

「ディルドは射精しないものね」

「そうなんです」

「やっぱりホンモノのペニスがいいって言うことね。じゃあ、もう、静子さんにとっては願ったり適ったりじゃない」

「まあそうなんですけど・・・」

「何か不満なの?」

「いえ、そうじゃなくて、逆」

「好きになっちゃった?」

「かも」

「それは大変。浮気が本気になっちゃったの?」

「まだそこまでは」

「昨日は一緒のベッドで寝たの?」

「いえ、それは踏みとどまって、シャワーを浴びた後は彼女にはゲストルームで寝てもらいました」

「それは良かった。同じベッドで朝を迎えると本気になっちゃうのよ」

「そうなんですか?」

「私の理論よ」

「でも分かる気がします。特に私は一人じゃないと寝られない性質だから余計に」

「それで彼女は今日は?」

「仕事だから朝早くに家に戻って、着替えて会社に行くって」

「そうだったわ、それでうちに来たのだったわね」

「会社の方は正念場みたいなんです。年明け早々にある製薬会社へ結果を報告しなければならないそうなんですが、まだ納得できるデータが出てないんですって。だから大晦日もお正月も休みなし」

「まあ、そんなに大変なの?」

「ベンチャーってどこもそんな感じですよ。でも逆にそのお陰で深みにはまらずに済んでるのかも。もしあのままずっと彼女がうちに泊まってたら、本気になってしまいそうで した」

「それ程好きなのね。一度お目にかかってみたいわ」

「ぜひそのうちに機会を作りますわ」

* * *

年が明けて1月4日にコージが帰ってきて、静子はいつもの生活に戻りました。折角コージが1週間も家を空けてくれたのに、ドリーとは結局コージが出発した日の晩にしか一緒に過ごすことはできませんでした。

ドリー、いえ、マイクの実験がうまく行ったことは翌週にコージから聞きました。どうやら大きな契約に持ち込めそうな様子で、AG社の投資家たちも満足しているようです。静子は会って思いっきり抱きしめたかったのですが、夜にマイクの家に電話してドリーに代わってもらい、「おめでとう」と言うのが精一杯でした。

ただの浮気の域を超えてしまっているという気持ちは静子の行動を一層慎重にし、コージと静子の出張がよく重なったこともあって、ドリーと夜を過ごしたのは精々月に一度くらいでした。コージが夜に電話を掛けて来ることがあるので、必ず静子の家にドリーが泊まりました。そしてその度に静子はダブルディルドでドリーのアヌスを犯したのです。

アナルセックスでドリーを射精させるということは、二人にとっての大きな目標になっていました。ありとあらゆる体位は試しましたし、ピストン運動も早くしたりゆっくりとしたり、途中まで抜いたり最後まで抜いたりと、考えられることは全て試したのですが、ドリー曰く、「あと一歩のところでイケない」のです。

* * *

「マーロンが最初にイッタのはどうやって?」

静子が真剣な顔で尋ねます。

「アナルセックスで?」

マーロンも真面目な顔で答えます。

「そう、ペニスには触れないで。どんな体位とかどんなシチュエーションとか」

「そうだね、いつだったかな?」

マーロンが宙を見上げて考えている顔を静子はじっと見つめています。この週末は折角コージが出張で居ないのに、ドリーも出張してしまっているので、静子は岡田夫人の家にお邪魔しているのです。そして幸いにもマーロンも一緒なのです。

真剣に考え込んでいるマーロンの隣で岡田夫人が笑いを堪えていましたが、遂に我慢できなくなって声を上げて笑い始めると、マーロンもつられて笑い出しました。

「何が可笑しいの?」

静子も訳がわからないまま、一緒になって笑い出します。

「オー、ソーリー、シズコ」

マーロンがやっと笑いを堪えて静子に微笑みます。

「実はね、あの時が最初だったんだ」

「あの時って?」

「シズコにディルドで犯された時」

「まぁ!」

「御免なさいね、静子さん、黙ってて」

岡田夫人がマーロンの肩を抱きながら微笑みます。

「台本ではあれから婦人警官が僕のペニスを掴んでフィニッシュさせる予定だったんだよ。でもシズコのディルドでイッちゃった。それまではいつもペニスを刺激しないと射精までは出来なかった。だからドリーの言うことは良く分かるよ」

「そうだったの」

「ご免ね、笑っちゃって。でも僕を初めて射精に追い込んだ張本人に真面目に聞かれたから何て答えようかって・・・」

「まさかあれが初めてだったなんて」

「だから上手だったっていつか言っただろう」

「まさかそういう意味だとは・・・」

「思わないよね」

「でもあの時はどうしてイケたのか分かる?」

「だからシズコが上手だったから」

「もう、それは止めて!」

「ああ、ごめんごめん」

マーロンはキャバルネを一口啜ると真剣な顔になりました。

「僕も驚いたんだよ、ペニスを触られてないのに突然射精してしまって。だから、どうしてだろうって考えたよ」

「それで?」

「多分、シチュエーションが大きいと思う。ああやって檻の中で拘束されて、周りに人が一杯居て、という状況が興奮を大きくしたんだと思う」

「私のアイデアなのよ」

岡田夫人が嬉しそうに言います。

「ドリーさんも一度檻に閉じ込めてみたら?それで皆で眺めながらあなたが長いディルドで犯せば、マーロンみたいに射精できるかもしれないわよ」

「そ、そんなこと、彼女は出来ませんよ」

「まあ、随分と彼女を守ろうとするのね」

「いえ、そんな意味じゃなくて」

「分かってるわよ。でも彼女も少し露出趣味のところがあるんでしょ、凄く大胆なドレスを着たり」

「それはそうですけど、マーロンみたいには」

「僕も最初からこうだった訳じゃないんだよ。エリーに上手く乗せられたというか」

岡田夫人が嬉しそうにマーロンを見つめます。

「乱交みたいなのはやったことがあったけど、僕一人を大勢に見られるというのはエリーに初めてさせられたんだ」

「させられたんじゃないでしょ?あなたがやってみたいって言ったのでしょ?」

「そう言わせたのはエリーだよ」

マーロンはにっこり微笑むと岡田夫人の頬にキッスをしました。

「だからドリーさんも可能性はあるわよ。無理強いはいけないし、逆効果だと思うけど、機会があったら、こんなこともあるわよって誘ってみたら?私から聞いたって言えばいいじゃない」

「そうですね」

静子は檻の中に全裸で拘束されているドリーの姿を、そしてドリーのアヌスにディルドを突き立てている自分の姿を想像して、少し心臓がドキドキするのを感じました。

「でも、私にはあんなパーティなんか出来そうもありません」

「私が手伝ってあげるわよ。お客さんとして参加するから」

「僕も召使か何かに変装して手伝うよ、シズコ」

「それは名案ね。男手はあった方が何かと便利よ」

岡田夫人がマーロンの手を握りながら嬉しそうに言います。

「そうですね・・・あっ、もうこんな時間。私、失礼しますね」

「あら、もう帰るの?帰っても誰も居ないんじゃないの?」

「週末の間に調べ物をしないといけないので」

「あら、そうなの。それじゃ残念だけど。でもパーティのこと、いつでも相談してね」

「僕も楽しみにしてるよ、シズコ」

二人に別れを告げて自宅に戻ったものの、仕事は手につきませんでした。書類を眺めていても、パソコンのモニターを眺めていても、全裸で檻に閉じ込められたドリーの姿が浮かんでしまいます。

『岡田夫人ったら、また変なことを教えるんだから。それにマーロンまで一緒になって』

静子は二人に上手く乗せられたような気分でしたが、次第に満更でもないかもしれないと思い始めました。でも、そんな機会が意外に早く訪れるとは、まだ夢にも思いませんでした。


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