エピソード III〜 静子

11.前触れ

ハロウィーン・パーティの翌週末の夜、静子は再び岡田夫人の家に呼ばれました。今日もご主人は居ないようで、その代わりにマーロン が一緒です。パーティの時はピエロのメイクをしていたマーロンの素顔はなかなかハンサムです。金髪を少し伸ばした彫りの深い顔は俯きがちですが、時折顔を上げて静かなブルーの目で見詰められると静子もドキッとする程です。

『彼のアヌスにディルドを・・・』

その事を思い出すと静子は俯いてしまうのですが、マーロンは何も無かったように平然と静子を見詰めます。

「先日はプレイの相手をしてくれてありがとう、シズコ」

「あっ、いぇ、私はただ・・・」

何て返事をしていいのか分からず静子が口ごもっていると岡田夫人が助け舟を出しました。

「マーロンは大学を出たての俳優の卵で、色んな体験をしたいらしいの。私と付き合ってるのも勉強なのよ、彼にとっては」

「そうとも言えるけど、僕がエリーを好きなことには変わりないよ」

マーロンは岡田夫人のことをエリーと呼びます。

「檻に入れられた囚人プレイも勉強なのよね」

「確かに。でもエリーがああいうプレイを好きなのも事実だよね」

「まあ、マーロン、それは内緒の約束でしょ」

岡田夫人は笑いながらマーロンの肩を叩くと、立ち上がってキッチンの方へ行きました。

「シズコもああいうプレイが好きなの?」

突然尋ねられた静子は、いきなり何と大胆なことを聞くのかと驚きました。

「いぇ、あの時が始めて」

「それにしては上手だった」

「ありがとう」

返事をしながら静子はこんな場合でもやはり ”ありがとう”って言うものかしらと少し考えました。

「とっても気持ちよかった。アヌスを犯されながら射精するのは格別なんだ」

「でもあなたはゲイじゃないのでしょう?」

聞きながら自分でも驚くほど大胆になっていくのを静子は感じました。

「多分、ゲイじゃないと思う。もちろん何度か男同士のセックスの経験もあるけど、やっぱり女性との方がいい。その中でもエリーは最高だよ」

「でも、岡田夫人はあなたのアヌスを犯したりはしないのでしょう?」

「しないね。でも、あっ、そうだ、このあいだダブルディルドのことを言ってた、シズコが気に入ったって。そうなの?」

そんなことまで岡田夫人はマーロンに話したのかと静子は恥ずかしくなりました。しかし、口が勝手に動きます。

「えっ、あぁ、まあね」

静子はどうしてこんなに正直に答えられるのだろうと不思議に思いました。

「ダブルディルドで僕のアヌスを犯してみたい?」

まるで静子の心の中を見通しているかのように、マーロンは静子が聞いて欲しいことを尋ねてきます。でもさすがに答えるわけにはいかず、静子は頬を少し染めて俯いてしまいました。

「マーロン、駄目よ、静子さんを誘惑しちゃ!」

ワインのボトルとグラス、それにチーズとクラッカーをお盆に載せて戻って来た岡田夫人が楽しそうに言いました。

「誘惑なんかしてないよ。僕はただシズコがしたいかどうか聞いてるだけだよ」

確かにマーロンの言うとおりです。それにマーロンの口から発せられると、言葉がその淫乱な衣服を脱ぎ捨ててしまったように純粋に響くのです。

不思議な男の子だわ。岡田夫人が夢中になるのも無理ないわねと静子はマーロンを見詰めながら思いました。

岡田夫人が腰を下ろすとマーロンは今までに経験した様々な勉強の話を始めました。その殆どは静子が想像すらしたことのないものでしたが、感情を表に出さずに淡々と話す マーロンの口ぶりはまるで研究発表会のようで、 ぼんやり聞いているとすーっと頭に入ってくるのですが、二三秒経ってから身体がその意味を理解すると、動悸が激しくなり顔が紅潮してしまいます。

そして驚いたことに、ちょうどワインが1本空く頃には、「この後、友達に会わないといけないからこれで失礼するよ」と言うと、マーロンは帰ってしまったのです。

「私がお邪魔だったんじゃ?」

慌てて静子が尋ねると岡田夫人は笑いながら答えました。

「そうじゃないの。しょっちゅうある事なの。逆に時間があってしたいときは、それこそあなたが居たって関係ないわよ」

「へぇー、不思議な人ですね?」

「そうでしょ?でも愛人にはもってこいなの」

静子は返事が出来ずにしばらく岡田夫人を見詰めてから、すっと視線を落としました。

『確かにあんな人ならいいかも。あんまり男っぽくないし』

「彼の友達に似たような男の子がいるみたいだけど、今度呼びましょうか?フランス系らしいわよ、とってもハンサムな」

「あ、そんな、岡田夫人」

静子は慌てて首を振ります。

「そうだったわね、あなたは女性の方がいいのよね。この前のパーティでは気に行った人はいなかった?あなたに杖を渡した魔女は確かレズのはずだけど 。あのラテン系の綺麗な子」

『あぁ、やっぱり、彼女はそうだったのね』

静子は最近何となくそういうことが分かるようになってきた気がしていました。もちろん確かめたことは今まで一度も無かったのですが、先日の魔女は確かにそんな雰囲気がありました。

「もう、その話は止めましょう?岡田夫人」

静子が少し膨れっ面をして立ち上がりかけたので、岡田夫人は慌てて静子の肩に手をやります。

「御免なさい、静子さん、もうこの話は終わりにしましょう」

そしてニッコリ微笑むと、静子のグラスにワインを注ごうとしてボトルが空なのに気付きました。

「あらっ、もう空だわ。もう1本持ってくるわ、静子さんは何がいい?」

「あぁ、もう私も失礼します。主人も帰ってくるはずだし」

「あら、そお?残念だけどコージさんが帰ってくるのなら仕方ないわね」

* * *

車に乗り込むとすぐにコージから電話が掛かって来ました。ちょうどLAXに着いたところで、夕食も機内で済ませたそうです。そして静子が家に帰って真っ白のラウンジウエア の上下に着替え 終わった頃にちょうどコージも帰ってきました。

「疲れたでしょ?ボストンは遠いわよね」

「でも少し眠れたよ」

静子がコージの腕の中に飛び込んで抱きつくと、コージもギュッと静子を抱きしめます。でもその時に静子はコージが一瞬躊躇したことに、そして微かな女の匂いに感付きました。

『飛行機に乗る直前まで誰かと抱き合ってたのね。シャワーを浴びたのでしょうけど急いでたのね、まだ匂いが残ってる。それも私の知ってる匂いだわ』

しかし静子は平然とその女の匂いを吸い込みます。

「先にシャワーを浴びるよ」

コージが静子の身体を離しながら言います。

「一緒に入らない?私も帰ったところなの」

「御免、もうクタクタなんだ、土曜日というのに朝からずっと会議で、ぎりぎりで空港に駆けつけて・・・」

『どうせギリギリまでホテルで女と一緒だったのでしょう。ちゃんと匂いを消そうと思ってるんでしょうけど、とっくに匂ってるわよ。でも誰かしら?』

「そうだったわね、じゃあゆっくりシャワーを浴びてきて。その後、ワインでも飲む?」

「冷たいのがいいね」

「ピノ・グリジオが冷えてるわ」

「それはいい。急いで浴びてくるよ」

コージが浮気をして帰ってきても平然としていられる自分に驚きながら、静子はキッチンで簡単なおつまみを用意します。といってもモッツァレラチーズとトマトをスライスしてドライトマトを振りかけ、オリーブを添えて最後にバスサミコ酢をかけるだけと言う簡単なものです。もう一つ、美味しそうなキュウリがあったので、スティック状に切ってもろみを添えます。もろキュウがピノ・グリジオに合うような気がしたのです。

『あっ、あの女だわ』

もろみの匂いが静子の記憶をどう刺激したのか分かりませんが、静子はその女を思い出したのです。

『確か、オフィスで会ったはず。特徴的な香水をつけてたから覚えてるわ。コージが投資した会社の副社長、確かジェニファーとか言う名前だった』

女の正体が分かると不思議なことに静子の気持ちは一層落ち着きました。そしてロサンゼルスの夜景が見えるリビングルームのテーブルにおつまみを並べていると、バスローブを纏ったコージが後から抱きついて静子の首筋に唇をピタリと付けます。

コージは滅多に付けないローションを付けています。きっと女の匂いが気になってるのでしょう。

「珍しいわね、コージがローションを付けるなんて」

「疲れてるときに少し付けると気分が楽になるような気がして」

「そうね。ああ、いい匂い」

静子は皿を置くと身体を捻ってコージと向き合い、しっかりと抱き合いました。

「静子はいつもいい匂いだよ」

「まだシャワーを浴びてないから・・・」

コージの唇に塞がれて静子はそれ以上は何も言えません。

長いキッスを終えた二人は並んでソファーに座り、程よく冷えたピノ・グリジオを飲みながらチーズを、トマトを、そしてもろキュウを摘まみます。

「もろキュウに白ワインは合うね」

「そうでしょう?特にピノ・グリジオが合うと思うの。シャルドネはもろみと一緒だと少し甘く感じそうだし」

コージはいつになく上機嫌でよく喋りました。余程ボストンで彼女と楽しい時を過ごしたに違いないと静子は思いました。 しかし少し酔いの回ったコージがラウンジウエアのトップの中に手を入れてくると、ブラジャーをしていない静子の身体は敏感に反応します。そして二人がソファに倒れこんで静子のボトムが脱がされると、Tバックすら着けていなかった静子の下半身にコージは益々興奮し、獣のようにわめきながら静子のトップを頭から抜いてしまいます。

一糸まとわぬ裸にされた静子はコージの手をすり抜けて寝室に逃げ込み、コージもすぐに追いかけて来るとバスローブを床に落とし、全裸の二人は今度はベッドに倒れこんだのです。

コージの唇が静子の全身を這い回ります。そして既に愛液を滴らせている局部を吸う頃にはコージの我慢も限界に達していて、慌ててスキンを付けるとコージは静子に覆いかぶさってきます。

今夜も静子の身体は激しく反応し、そのことがコージを益々興奮させてペニスが一層膨れ上がるのを静子はヴァギナで感じるのです。

「上にならせて」

「ぁあ、いいよ」

いつになく積極的な静子の言葉にコージは有頂天になり、静子の裸身を抱きかかえながらゴロリと仰向けになると、今度は静子がコージに跨る格好です。

コージを見下ろしながら腰を前後に動かすとヴァギナの中でペニスがくねります。

『ああ、あの時と同じだわ』

静子はダブルディルドでケイトを犯した夜のことを思い出しました。そして自分の両膝をコージの両脚の内側に入れながらコージの脚を拡げ、両脚を曲げさせながら自らも膝を曲げていくと、まさにあの夜の体位になったのでした。

「ぁあ、静子」

まるで静子に犯されているような体位を取ることになったコージは益々ペニスを固くし、両手で静子の豊満な乳房を鷲摑みにしながら喘ぎます。そして静子はあらためてピストン運動を開始したのです。

「クゥッ、クフゥッ、フゥッ」

静子の動きに応えるようにコージが低い声で呻きます。「ゥウ、ゥウ、ゥウ」

「クゥッ、クフゥッ、フゥッ」

「クゥッ、クフゥッ、クゥッ」

「クゥッ、クフゥッ、クゥッ」

夢中でピストン運動を繰り返しているうちに、気が付くとコージの呻き声が高くなっています。

「ォオ、ォオ、ォオ」

『ああ、マーロン。マーロンなのね』

いつの間にか静子はダブルディルドでマーロンのアヌスを貫いています。

『ああ、マーロン。岡田夫人には黙っててね』

「クゥッ、クフゥッ、フゥッ」

「クゥッ、クフゥッ、クゥッ」

「クゥッ、クフゥッ、クゥッ」

しかし夢中でマーロンのアヌスを犯していると、いつのまにか再び呻き声が変わっていて、今度は見知らぬ若者のアヌスを犯しています。

『ああ、あなたは誰なの』

会った事もないその顔はアジア系のようです。

「クゥッ、クフゥッ、フゥッ」

そして夢中でその若者のアヌスを犯していると、次には若者がケイトに変わっています。

『ああ、ケイト、ケイト、会いたかった』

「クゥッ、クフゥッ、フゥッ」

「ァアッ、ァアッ、ァアッ」

静子が喘ぎながら腰を突き出すとケイトも喘ぎます。

「クゥッ、クフゥッ、クゥッ」

「ァアッ、ァアッ、ァアッ」

『ああ、もうイキそう』

あまりの快感に静子が思わず動きを止めると、いつのまにかケイトと入れ替わった見知らぬ女が日本語で叫びます。

「止めないで、静子夫人、突いて、もっと強く、もっと激しく!」

女は魔女のメイクをしていますが、先日のパーティに来ていたラテン系の女性ではありません。それに日本語で叫ぶなんて。

『ああ、誰なの、あなたは、誰なの』

静子は渾身の力を振り絞ってピストン運動を再開します。

「クゥッ、クフゥッ、フゥッ」

「クゥッ、クフゥッ、フゥッ」

「ァアア、シズコォォォオオオーーー」

突然コージ が声を上げ、ペニスがビクンビクンと何度も脈打ちます。そしてそれにあわせるように静子も身体をブルブルと震わせ、最後にはコージにしがみ付きながら絶頂を極めたのです。

「ぁあ、私も、イクゥゥゥウウウウウーーー」

 

熱いシャワーを浴びながら静子はさっきの二人は一体誰かしらと考えました。

『岡田夫人がマーロンに似た友達がいるなんて仰るからあんな妄想を抱いたのだわ。でもあの若者はフランス系じゃなくてアジア系だったような気がするし。それに最後の 魔女は日本語で叫んでいたわ。メイクの所為で素顔は良く分からないけれど、どこかで会った人かしら』

静子がバスローブを羽織ってリビングに戻るとコージは既にゲストルームでシャワーを浴びてきたようで、座ってビールを飲んでいます。

「静子も飲む?」

「ええ、戴くわ」

静子が隣に座ると、コージは新しいグラスにビールを注ぎ、自分のグラスを目の高さに持ち上げると静子を見てウインクをしました。

『さっきのセックスに満足したのね』

静子は自分のグラスを取ると、コージのグラスに軽く合わせてから、勢い良くゴクンゴクンと飲み干しました。

「あっ、そうだ、忘れないうちに。12月の最初の金曜日 、3日だけど夕方空いてる?今度コースト・キャピタルのゴードンに勧められて投資した会社のオープニング兼クリスマスなんだ」

「私も一緒に?」

「アプライド・ジーンズっていうバイオテックなんだ。UCLAのスピンオフだよ。静子もこれからはバイオもやりたいって言ってただろう?近所だし、どんな連中がやってるのか見ておいても損はないよ」

「そうね、後で確認するけど多分スケジュールは空いてたと思う」

「じゃあ、3時過ぎから空けておいて。後でメールするけど、オフィスから一緒に行こう」


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