エピソード II〜 ジーナ

13.ベストフレンド

ローラのペニスにアヌスを貫かれるという夢がついに叶った私は幸せの絶頂でした。翌日の日曜日にもローラを誘って、今度はサンタモニカの直ぐ南にあるベニス・ビーチへ行きました。もちろん二人ともTバックビキニを着て。ベニス・ビーチはサンタモニカよりも若者が多く、ビキニで歩いている女の子も沢山いますが、さすがにTバック姿は数える程です。そして何よりベニス・ビーチのいいのはビーチと街がくっついているので、Tバック姿で街の通りを少しは歩けるのです。私はまたしても露出の快感に溺れ、アヌスを疼かせながら何度もペニスを濡らしたのです。そして夕方まで思いっきり露出を堪能したあと、ローラのアパートで再びアヌスを貫かれて歓喜の涙を流しながら絶頂に達したのでした。

それでも月曜日になると私はマイクに戻り、ポストドクとして研究に、そしてローラを始めとする大学院生の指導に打ち込みます。以前はジーナになる時に一生懸命演技をしていましたが、今は逆で、マイクになった時に男っぽく振舞い、男っぽい話し方を心がけ なければなりません。言葉使いについては私がネイティブスピーカーでなかったことが幸いしました。多少変なアクセントや言い回しをしても、誰も不思議には思わなかったからです。長く伸びた髪をゴムで留めて太い縁のメガネを掛け、 ピッチリしたTシャツの上にゆったりしたカッターシャツを着て、ルーズフィットの綿パンを穿けば、ごく普通のアジア系男性研究者 に見えるのです。

しかしさすがにこの日は週末に狂態を晒した直後とあって、私はなるべくローラと顔を合わせない様にしていました。 ジーナでいる時にはローラの前でどんな恥ずかしいことも出来るようになったのに、マイクでいる時にはそうもいかないのですね。それに、ローラにまるで身体はまだ男であることを思い出させるようなことを、それも二度までもさせてしまったのですから、きっと嫌な想いをしたんじゃないかしらと、遠めにローラの姿を眺めながら思い悩んでいました。

そんな私の心を見透かしたようにローラがいつかのTというイタリアンレストランでランチを一緒に食べようと誘って来たのはお昼前のことです。 もちろん私はOKして、私のカムリにローラを乗せてTへ行きました。予約も入れておいてくれたので、私達はすぐに席に着くことが出来たのです。

「週末は楽しかったわね」

ローラが意味ありげな笑みを浮かべながら口を開きます。

「ああ、まあね」

私は何て返事していいか分からず、顔を少し赤らめて下を向きます。

「あんなことをさせて悪かったね」

ローラと二人っきりの時でも、外でマイクの格好をしている時は私はマイクの話し方になります。いつ誰に見られてるか分からないからです。

「いいのよ、全然。あういうことは、最初にマイクがあそこが感じるって言ったときから、いつかしてあげないとって思ってたから」

ローラが顔を近づけて囁きます。

「そう言ってくれるとホッとするよ」

ウエイトレスが注文を聞きに来たので私はアーノルドパーマーを、ローラはレモネードを頼みました。そしてサラダとシーフードパスタをシェアすることにします。

「久しぶりだね、ここは」

「ここに来ると始めて来た時のことを思い出すの」

「ちょうど2年前だね。君が始めてラボに来た日。その前に見学に来たのは別にして」

「そうね、あれから2年も経つのね。今でもはっきりと覚えているわ、マイクがランチに誘ってくれたのを」

「僕もだよ」

「そして、マイクと結ばれた次の日にも来たの」

「そうだったね」

「あの頃が懐かしい・・・」

突然、ローラは言葉を詰まらせると、俯いてナプキンで目頭を押さえています。

「どうしたの、ローラ。大丈夫?」

ローラはコクンコクンと首を縦に振って頷くと、顔を上げて私を見つめながら続けます。

「御免なさい。あの頃の事を思い出すと駄目なの・・・。私、本当にマイクのことを愛してたの。マイクと出会えて、本当に幸せだった。もしマイクと出会わなかったら、 一生誰も愛さずにいたかもしれない」

「僕、いえ、私もよ、あなたに出会ってなかったら、本当の私を知らないままだったと思うわ」

思わずジーナの話し方になってしまいます。

「私、今でもマイクのことを愛してるのよ」

「私ももちろんあなたのことを・・・」

そこまで言って私は気付きました。ローラがずっと『あなた』と言わずに、『マイク』と三人称で呼んでいたことを。

「ロ、ローラ。マイクって私のことよね?」

ローラは黙って私を見ながら首をゆっくりと左右に振ります。

「ジーナ、御免なさいね。あなたはマイクの格好をしているけど、もうマイクじゃない。私のマイクじゃないの」

「ローラ、待って。確かに身体は変わったかもしれないけど、あなたへの気持ちは少しも変わってないのよ」

「ちがうの。あなたの気持ちは変わってないかもしれない。でも、私のマイクはどこかへ行ってしまったの」

「どこかって、どこへ行ったって言うの?」

「分からない。私には分からないわ。私はずっとマイクの助けになりたくて、マイクがTGになりたかった気持ちも良く分かったし、だから一生懸命お手伝いしてあげて、でも気が付いたらマイクはいなくなってしまったの。私は自分で、私の一番大切な人を遠くへ 旅立たせてしまったのね」

ローラは必死で涙をこらえていますが、大きな青い瞳がまた少しずつ潤んできます。

「そうだったの。ローラ」

私も言葉に詰まってしまいましたが、何度か深呼吸をしてから続けました。

「御免ね、ローラ。あなたの言うとおりかもしれない。私は身体だけじゃなくて心もジーナになってしまったのかもしれないわね。でもジーナもあなたを愛してるのよ」

「ありがとう、ジーナ。私もあなたのことが大好きよ。でもね、私はあのマイクじゃないと駄目みたいなの。あなたはマイクなのだから 、少なくとも元はマイクだったのだから愛することができるはずって、自分に言い聞かせるんだけど・・・駄目なの。あまり無理をすると逆にあなたが嫌いになりそうなの。許してね、ジーナ」

ローラは俯いて再びナプキンで目頭を押さえています。

ちょうどウエイトレスが料理を持ってきましたが、ただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、小さな声で「お待たせ」というと、料理を置いてすぐに引き下がります。

「ローラ?私があなたのマイクじゃ無くなったのはいつ頃?」

「そうね、イースターの頃かしら。あなたが始めてミニドレスを着てプロムナードへ一緒に行ったでしょ。あの時に、始めて感じた気がする」

「それまでは?」

「それまではずっとマイクを愛せると思ってた。マイクがホルモン療法を始めた時もそう信じてた。でもね、一番最初にマイクがTGになりたいって言った瞬間から、私は こうなるんじゃないかって、もしかしてマイクを失ってしまうんじゃないかって恐れてたのよ」

「じゃあ、どうしてあんなに協力してくれたの、あなたの大切な人を失うかもしれなかったのに」

「マイクが好きだったから。愛してたし、マイクを助けてあげたかった」

「そうだったの。ああ、ありがとう、ローラ」

今度は私がナプキンで顔を覆ってしまいます。

「ぁあ、あなたのお陰で私は幸せになれたのに、あなたの大切な人を遠くへ行かせてしまったなんて、・・・でもどうして今まで黙ってたの?」

「あなたが迷うかもしれないと思って。後悔するんじゃないかと思って。でも、もうジーナは大丈夫だって昨日思ったの」

「ずっと我慢してたのね」

「違うのよ、ジーナ。我慢してたのじゃないわ。私も一緒にジーナを育ててるような気になってたもの。あなたが成長していくのを見るのがとても楽しかった。だから私は後悔なんかしてないのよ」

「ああ、ローラ。あなたっていう人は、どうしてそんなに優しいの。ねえ、これからも友達でいてくれる? 一緒にショッピングしたり、未だあなたに教えて欲しいことが一杯あるの」

「もちろんよ」

「良かった。ありがとう、ローラ」

「ジーナは私のベストフレンドよ」

「ありがとう、ローラ。でもラボでは私はマイクの格好をするけど?」

「あなたを見ながらマイクの事を思い出すわ」

「辛いでしょ?ローラ」

ローラはじっと私を見詰めていましたが、黙って首を横に振りました。

 

午後は実験の予定を入れてなかったので私は論文を読んだり調べものをして過ごしましたが、どうしてもローラのことを考えてしまいます。

可哀想なローラ。

愛する人を助けた結果、その愛する人が自分の愛する人では無くなってしまうなんて。 何事もなかったようにテキパキと実験をしているローラを見ていると、また涙が滲んできてしまいます。

いっその事、ホルモン療法を止めてしまおうかしら。でも、脂肪の分布や皮膚の透明感などは戻るらしいですが、大きくなった乳房や乳首、それに乳暈なんかは戻りません。それにローラが感じたのはそんな見かけのことじゃなくて、私の内面がジーナに変わってしまったからなのです。

私も失恋したわけだから哀しくなっても当然なのですが、まるで恋人を亡くしたような ローラの心の痛みを想像すると、哀しいなんて言えません。それにローラは友達ではいてくれるのですから。それに引き換えラボでマイクの格好をした私を見るたびに 亡くした恋人を思い出すローラの辛さは計り知れません。

私がラボを出ようかな。

ローラは大学院の2年目が終わったところです が、極めて優秀な彼女は学位研究計画書もとっくに承認されていて、普通なら5年かかるところを上手く行けばあと1年で学位がとれるかもしれません。でもその間ずっと辛い思いをさせるなんて、私にはとてもできません。 それに私はもう7年もポストドクをやってますからそろそろ安定な仕事に就くべきなのかもしれません。あまり将来のことを考えるのは好きではないのですが、これを良い機会と思って就職しなさいって神様が言ってるのかもしれません。

そうだ、その時は女性として就職しましょう。公私共にジーナに生まれ変わる良いチャンスかもしれないのです。


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