エピソード II〜 ジーナ

1.再会

やっとローラに告白できた私は、今まで如何に自分の気持ちを押さえて我慢していたのかを改めて実感しました。 そして私が最も幸運だったのは告白した相手がローラだったことです。彼女ほど私の気持ちを全て理解できた人はいなかったでしょうから。逆に言えば、もし彼女と出会わなかったら今の私はいなかったかもしれません。

告白した夜はさすがに二人ともセックスをする気にはなれず、私たちはただ抱き合って眠りました。ローラがずっと私の頭や肩、それに背中を撫でていてくれ、私は安心して眠りに付けたのです。ただ告白しただけで、私の外見はマイクのままなのに、私の 中身はすっかり女の子に変わってしまったようです。 もちろんローラが貸してくれた可愛いネグリジェの影響もあったかもしれませんが。

夢の中では私は綺麗な女の子です。そしてローラと手を繋いでショッピングをしたり、海辺を散歩したり、お洒落なレストランで食事をしたりしました。

翌朝目を覚ますとローラは既に起きてキッチンで朝食の準備をしているようです。 私は未だ半分夢見心地のまま、ネグリジェ姿の自分をギュッと抱きしめてからベッドを出てバスルームへ行きます。

でもバスルームの鏡に写った姿を見て愕然としました。私は慌ててネグリジェを脱ぎ、マイクのTシャツとジーンズに着替えてキッチンに向かったのです。

浮かない顔をしている僕を見るなりローラは感づいたようです。

「どうしたの?朝食が済んだらお化粧してあげるから元気を出して」

「ああ」

朝食の間、僕はあまりしゃべりませんでした。僕の願望と現実のあまりの違いに自信を無くしたのです。その代わりにローラが昔の話を沢山してくれました。男性である外見にどれだけ悩んだか、そしてどうやって今の美しいローラに変わって行ったのか。話を聞いているうちに僕にも少しずつ希望が見えてきたような気がしました。

朝食の後片付けを一緒にした後、僕たちはバスルームの洗面台の前に並んで座りました。

「髭は念入りに剃らないとね」

いつだったか膝枕で髭を剃ってもらったことがありましたが、今日のローラは少しの剃り残しも無い様に念入りに剃ってくれます。髭を剃り終えると、眉毛を少し細い目に揃えてもらいます。そして他に無駄毛が無いのを確認してから ファンデーションを塗ってもらいます。ローラは僕よりもずっと色白なのですが、日焼けした時の為の濃い色のファンデーションがちょうど僕の肌の色に合いました。

眉を揃えてファンデーションを塗るだけでこんなにも変わるものかと驚きました。あとはアイシャドーとアイラインで目をはっきりとさせ、マスカラで睫毛を強調します。最後に口紅を付け てもらうと自分でも見とれてしまう美しい顔になり、僕は思わずローラの方を見てニッコリ笑いました。

「気に入った?あなたの顔立ちは結構整ってるから意外に楽だわ」

「まるでハーフみたいだね」

「それは私のお化粧の仕方の所為かもしれないわ。気に入らない?」

「いや、いや、凄く気に入ったよ」

ああ、でも中途半端に伸びた髪型が全然駄目です。僕が髪に手をやると、 「ちょっと待ってて」と ローラはクローゼットの中をごそごそ探し回っていましたが、「合ったわ」と丸い箱を出して来ました。

「黒髪にあこがれたことがあったのよ、私。マイクに似合うと思うんだけど」

ローラが箱から取り出したのはまるで日本人形のような緑の黒髪のカツラです。最近の茶髪の多い日本では逆に目を引きそうな真っ黒の美しい髪です。ローラは僕の髪をピンで丁寧に留めると、カツラを被せてくれます。

「おかっぱ?」

英語で何と言うのか知らなかったので 思わず日本語で言うとローラが不思議そうな顔で僕を見つめます。

「何それ?ボブカットって言うのよ。ちょっとボーイッシュだからちょうどいいのよ」

カツラをピンで留めて髪を整えるとローラはニッコリ笑います。

「やっぱり良く似合うわ。どう?鏡を見てみて?」

身体の向きを変えて鏡を覗き込んだ僕は「あっ」と小さく叫んでしまいました。

鏡の向こう側で僕を見つめているのはジーナではありませんか。

「どうかした?」

「いや、別に」

心臓がドキドキします。こんなに早くジーナに再会できるなんて。

中性的な美しい顔立ちにボーイッシュな髪が似合っています。目元は僕の特徴が残っていますが、知らない人には女性に見えるでしょう。

「凄いね。女性に見えるね」

鏡の中のジーナを見つめながら僕はお礼を言います。

『ジーナ、ありがとう、また会えたね』

『マイク、今日からあなたがジーナなのよ。ローラに感謝しなさい。そしてローラをずっと愛してあげるのよ』

『もちろんだよ、ジーナ』

ジーナを見つめているうちに僕は目頭が熱くなって、しまいには涙がポロポロと零れ出します。

「泣いちゃ駄目よ、マイク、折角のメークが」

「御免よ、ローラ。でもあまりにも・・・」

「私色々勉強したのよ、どうすれば女性らしく見えるかって。だから上手でしょ」

「ああ、本当に、ローラ、君は凄いよ」

僕はティッシュで目頭を押さえて何とかそれ以上涙が溢れるのをこらえ、ローラをギュッと抱きしめました。

「さあ、カツラはこれでOKだから先に服を決めましょう」

ローラは僕の腕を優しく解くと、頭に留めたピンを抜き、一旦カツラを外すと箱に戻します。

「えっ、服も?」

「あら?私みたいに成りたいんでしょ?」

「うん、でも今すぐでなくても」

「今すぐ成れるわよ」

ローラは再びクローゼットを探すと、ブラとガードルを取り出して来ました。

「ホルモン治療をする前に使ってた下着だけど試してみる?サイズはあなたとそんなに変わらないと思うの。パッド入りのブラにこれもパッドの入ったガードル」

「うん、試してみる」

僕はTシャツとジーンズを脱ぎ、黒のTバックだけになりました。

「ほら、こうやってね、パッドの位置を合わせながらブラを着けると、Bカップには十分見えるでしょ。あっ、そのTバックは駄目よ。男性用は前が膨れてるから、私のを貸してあげるわ」

ローラは跳ねるようにバスルームを出て行くと、真っ白のTバックを持って戻ってきました。

「さあ、脱いで。そしてそこに仰向けになって」

僕はTバックを脱ぐとブラを着けただけの姿で局部を右手で押さえながら仰向けになります。ローラは引き出しからいつか見たハート型に切った肌色のテープを取り出します。

「タックってしたことある?」

「無いよ」

「いつかあなたに気付かれたことがあったでしょ、私がこのテープで袋を留めてたのを」

「ああ、覚えてる」

「あれをするのよ。はい、手は邪魔だからどけて、脚を開いて」

ローラは僕の右手を優しく掴むと身体の横にずらします。いきなりローラの目の前にペニスを晒すことになり、あっという間にペニスが固くなってきます。

「脚を開いて」

「ああ」

僕は思い切って太腿を開きますが、すると一層ペニスが勃起します。

「まあ、そんなになったらタックできないわ」

「今日はタック無しでは駄目なの?」

「あなたに一番似合うのはレギンズだと思ったんだけど、前が膨らんでるとおかしいでしょ?仕方ないわね」

僕はてっきりタックは許してもらえるのかと思いましたが、次の瞬間ローラは僕のペニスを掴むと唇を付けて来たのです。

「ああ、ローラ」

「いいのよ、心配しないで」

ローラは一旦唇を離してそう言うと、次には僕のペニスを根元まで深く咥え込んだのです。

「ぉおお」

そしてローラは僕の方を見てニッコリ微笑むと、ゆっくりとピストン運動を始めたのです。

「ああ、ローラ」

女装のメークをした上にパッド入りのブラを着け、下半身だけは裸でフェラチオをされるという異常な興奮も手伝ったのか、僕はあっと言う間に絶頂の間際まで追い込まれました。

「も、もう、イキそう」

ローラの目がイキなさいと熱く囁き、ローラの熱い舌がぞろりと僕の亀頭部をひと舐めした途端、僕のペニスの根元に熱い奔流が走り、それはそのままペニスの中をドクンドクンと通ってローラの唇の奥に迸ったのです。

「ぅぅぅううう」

ローラの喉がゴクンゴクンと鳴り、続いてローラの舌がまだ射精直後でとても敏感な亀頭部を舐めまわし、僕は「オゥオゥ」と喘ぎます。

ようやくローラが唇を離した時は僕のペニスはまるで赤ん坊のそれのように小さくなっていました。

「これで良いわ」

ローラはティッシュで僕のペニスを拭うと、慣れた手つきで陰嚢を僕の体腔に押し込み、ハート型のテープで留めてしまいます。

「さあ、立ってTバックを穿いて」

僕は立ち上がると白のTバックに脚を通し、太腿の付根までずり上げました。いつも脚の間で揺れている陰嚢が無くなると、それだけで女性に近づいたような気がします。

「そこからペニスを、こうやってね、会陰の方へくっつけるのよ」

もうローラに弄られてもペニスは勃起することもありません。ローラは僕の小さなペニスを股間に向けて会陰部に押し付けると、その上からTバックを被せながら横紐を引き上げます。

「ぁああ」

下を向いて見るまでもなく、まるでペニスが消滅したかのような不思議な感触です。そして顔を下に向けて自分の下腹部を眺めると、それはまさに女性のようなのです。

「はい、次はガードルを穿いて」

まるでローラの着せ替え人形になったみたいで、僕はうきうきしながらガードルに脚を通します。左右に二つ、ちょうどお尻を強調するように大きなパッドが入っています。

身体にきつくフィットするガードルを穿くと、股間が一層締め付けられ、僕の下腹部は完全に目立たなくなりました。しかもパッドのお陰で後ろに形良く張り出したヒップはまさに女性のようです。

「レギンズは光沢のある黒がいいわね。ちょっと派手目の方が意外と目立たないのよ」

ローラがクローゼットから取り出したレギンスはピッタリで、しかも太腿や脛の毛を完全に隠してくれます。

「マイクの膝って綺麗ね。私も幸い細い膝なんだけど、膝が太い人は苦労するみたいよ。さて、上はどれにしようかな」

ローラはクローゼットの中を探しまわり、濃いグリーンのざっくりとしたセーターを取り出しました。

「着てみて?」

とっくり襟のセーターは男っぽい首筋を隠してくれます。

「丈が短か過ぎない?」

セーターの丈は股上までしかないので、レギンズの股間が露わなのです。

「こういうのが好きなんじゃないの?」

ローラに見事に気持ちを見抜かれて僕は顔を熱くしました。

「そうだけど、おかしく無い?」

「全然。さあもう一度カツラを付けて」

ローラはカツラを被せてピンで留めると、薄いグリーンのスカーフを首に巻きつけてくれます。 とっくり襟から少しだけ除いていた首筋から顎にかけてもこれで完全にカバーできます。

「さあ、どう?」

鏡を見るとそこには僕ではなく、レギンズとセーター姿のジーナが佇んでいます。

「とっても素敵だ」

「そうでしょ。それにこのサングラスをかければ絶対にマイクだと分からないわ」

黒い大きなサングラスを僕に渡しながらローラはニッコリと笑います。

「えっ、もしかして出かけるつもり?」

「もちろん、今から出かけるのよ」

「そ、それは無理だよ」

「大丈夫よ。それに出かけて誰かに見られないと女装の意味がないでしょ?」

再び心臓がドキドキしてきます。確かにジーナになるのは嬉しいけど、いきなり出かけるなんて。 知ってる人に合ったらバレちゃうかもしれません。

「ほら、サングラスかけてみて?」

仕方なくサングラスをかけて鏡を覗き込みます。

鏡の中のジーナは緊張した面持ちでしたが、しばらく見つめていると、フッと微笑みました。

「本当だ。これなら大丈夫かも」

「あとは、ソックスはこれね。靴のサイズは?」

「エイト・アンド・ハーフかナイン」

「じゃあ私のスニーカーがきっと履けるわね。このピンクのラインの入ったのはどう?」

真っ白に少しだけ薄いピンクのラインの入ったナイキのスニーカーです。

「可愛いね」

「履いてみて」

「うん、ぴったりだよ」

「じゃあ私もすぐに着替えるからリビングで待ってて。その間に歩き方を練習しててね。膝が軽く触れるようにするの」

リビングの大鏡の前で歩く練習をしていると白いレギンズに白いセーター、そして真っ白のスニーカーを履いたローラが現れました。幅広の金のベルトが白一色の上下に適度なアクセントを与えています。

「綺麗だよ、ローラ」

思わず立ち止まって見とれてしまいます。

「ありがとう。マイクも中々のものよ。でも、立ち止まった時も脚を開かないように。どちらかの足を半歩前に出して、そうそう、そうよ。じゃあ、歩いてみて」

僕は教えられたとおり膝を触れさせながら歩いてみます。最初はぎこちなかったけど次第に慣れてきました。

「そうそう、その調子。じゃあ出かけましょう、マイク」

そこまで言うとローラは「ムフッ」と吹き出してしまいます。

「マイクはおかしいわね。女の子の名前を考えないと。何か好きな名前はある?」

「もちろんあるよ」

「何ていうの?」

「ジーナ、ジーナだよ」

「ジーナ?いい名前ね。誰なのジーナって?」

「それは・・・、またいつか話すよ」

「いいわ、じゃあ行きましょう、ジーナ」

ローラはそう言うと僕の手を取り、僕たちは玄関を開けて外に出ました。


inserted by FC2 system