有馬温泉編(1)関西の奥座敷

ゴールデンウィークの終盤に、二泊四日の駆け足で日本最古泉といわれる関西の奥座敷、有馬温泉へ行ってきました。静子夫人が関西で仕事があったので、週末に一緒に行こうと呼ばれたのです。温泉 なんて高校の修学旅行以来です。郊外で育ったので銭湯ですら数えるほどしか行ったことはありません。ましてや「オンナ」の体になってからは男湯は恥ずかしいし、だからと言って女湯には入れないし、混浴ならいいので しょうが今まで機会はありませんでした。今回は、貸切露天風呂があるからということで、夫人のお誘いを受けることにしたのです。

ただ、夫人の出張はもっと長いので往きも帰りも私一人。ちょっと寂しかったし、去年みたいなフライト中のハプニングもありませんでした(ご期待に応えられなくて御免なさい)。

木曜日の昼頃にロサンゼルスを出ると 成田着は金曜日の夕方。その夜は都内に泊まって、土曜日の午前中に少しだけ買い物をしてから昼過ぎに羽田を発って夫人と待ち合わせしている大阪の伊丹空港へ向かいます。私の格好はというと、ローライズの ブルージーンズに少しお臍が見える程度の白いノースリーブシャツ。 タイトフィットなのでそんなに大きくない胸の膨らみも強調してくれます。長い髪は留めずにストレートに背中に垂らしています。足元は白のスニーカー。もちろん今日はブラもTバックも付けています。出迎えてくれた夫人 も今日はオフなのでしょう、黒のスパッツにお尻が辛うじて隠れる丈の薄い黄色のシャツ。髪の毛は同じ黄色の髪留めで一まとめにしておられます。有馬温泉まではタクシーで 1時間足らず。午後3時過ぎには到着しました。

老舗の旅館『K』は数年前に玄関あたりを改築したとのことです。山の斜面に沿って建てられていて和風ながらモダンな作りでとても素敵です。私たちの通されたお部屋は3階にあり、まず玄関 を入るとその横にはバス・トイレ、そして奥に20畳程度の座敷があり、さらにその奥に6畳程度の洋間が窓に面しているという広々とした造りです。 窓からは新緑の林が見渡せ、下を見ると散歩道を歩くカップルの姿が見えます。

仲居さんが食事の時間を尋ねられます。ゆっくりお風呂に入っても時間はタップリ。食後もゆっくりしたいので6時から夕食をお願いしました。

浴衣を用意してありますが、お二人とも身長が御ありだから大きいサイズの方がよろしいでしょうねと言われ、お願いしますと会釈で返すと仲居さんは、では直ぐに持って参りますと行って部屋を出て行きました。

すぐに、「失礼します」と声がして玄関の方を見ると、美しい着物に身を包んだまるで女優さんみたいな方が浴衣を抱くように持って入ってきます。若女将 さんです。

「こちらに浴衣を置きますね、女性用はピンクなんですよ」と言った後、神妙な顔つきになって、「実は貸切露天風呂が今朝からポンプが故障して使えないのですよ」とおっしゃるのです。

まあ、どうしましょう。折角貸切のお風呂に夫人と一緒に入れると思って来たのに。

若女将は申し訳なさそうに、「今の時間なら大浴場も空いていますからほとんど貸し切りみたいなものですので、それに随分広いですからゆったりとお入りになれますよ 。金色の金泉に透明な銀泉、それにサウナもありますから」と言ってにっこりと微笑みます。

すると静子夫人が、「実はこちらの彼女はTG、つまりニューハーフというかおかまというか、要するに女湯には入れないと思うんですけど」と真面目な顔で尋ねます。

若女将は私の方をチラッと見ると頬を赤らめて、「まあ、そうなんですか。ちょっと女将に聞いてきますのでしばらくお待ちください」と言って慌てて出て行きました。

すぐに、今度は女将が「失礼します」と言いながら入ってきました。若女将に負けない位の美人で、しかもこの旅館を何十年も仕切ってきた自身が顔からにじみ出ています。

「お客様、ちょっと聞きにくいのですが、あれは未だついておありなのですか?」

「ペニスのこと?」と静子夫人が単刀直入に聞き返します。私は恥ずかしくて窓の方を向いて二人の会話を聞いています。

「ええ、そうです」と女将が答えます。

「ペニスも睾丸も立派に付いているわ。ねえ、ドリー?」と夫人が私の方を向きますが、私は声も出せずに頷くだけです。

「それなら申し訳ないですが女湯に入っていただくことはできませんね、お客さん。御免なさいね」と女将は申し訳なさそうに言うと、軽く会釈をして部屋から出て行きました。

「私は部屋のバスでいいですから、静子夫人、大浴場へどうぞ行ってらっしゃい?」と少しすねてしまった私はふくれっ面で言います。

「ドリー、そんな事を言わないで。折角有馬温泉に来たのだから、大浴場へ行きましょう。一緒に入れないのは残念だけど」

「でも男湯なんて嫌です」

「そうね。周りの人もビックリするでしょうね」と夫人も神妙な顔になります。

ところがしばらくしてふと顔を上げると夫人はにっこり笑って、「じゃあ、いっそのこと露出プレイということにしましょう」とまたまたとんでもない事を言い出すのです。

「嫌ですわ、そんな事」と言いながら私は骨盤の奥がキューンと疼くのを感じました。

「私一人で露出プレイなんて、無理です」

「ドリー、あなたも一人で出来るようにならないと困るわよ。さあ、決まり。男湯で露出プレイよ!」

夫人はおかしな理屈をこねると自分の事のようにはしゃぎ出して私のシャツを脱がせ、次にはジーンズのボタンを外しにかかります。あっと言う間に純白のブラとやはり白のTバックだけの姿にされた私はペニスを勃起させてしまいます。

「さあ、浴衣を着て」と夫人は私にピンクの浴衣を着せてくれます。そして自分もさっさと服を脱いで下着だけの格好になると、同じようにピンクの浴衣を纏うのでした。 そして化粧品のバッグを出すとさっさと化粧を落とし始めます。

「あなたも早く」

夫人に言われて仕方なく私も化粧バッグからクリームを取り出しメークを落とします。夫人はもう化粧を落とし終わって黄色の髪留めを外して長い髪を背中に垂らします。

私も準備ができたので 貴重品を金庫に入れ、部屋の鍵だけを浴衣とお揃いのピンクの袋に入れ、旅館の下駄を履いて私たちは別棟の大浴場に向かいます。エレベータでロビーに下りると、水色の浴衣姿の男性が数人うろうろしていて、私たちに好奇な視線を投げかけてきます。目を合わせないように別棟のエレベータへと向かいます。

エレベータのドアが開いて私たちは乗り込みます。幸い他には誰も乗っていません。大浴場は2階です。

「本当に男湯に入らないといけないのですか?」

「そうよ、だってペニスも睾丸も付いているのだから。今の時間は空いているから大丈夫よ」

2階に着いてドアが開き、私たちはエレベータから降ります。そこも広いロビーのようになっていて、直ぐ右手が男湯の入り口、その向こうに女湯の入り口が見えます。どちらも入り口付近には小石が敷き詰められた小さな庭が造ってあって、背の低い樹木が植えられ灯篭が置かれており、とても建物の中とは思えない風情を漂わせています。

一足先に隣のエレベータから降りた水色の浴衣の三人連れが男湯に入っていきます。

「ああ、人が入って行きます」

「少しくらいは居てもらわないと露出プレイにならないでしょ。私はゆっくり入りたいから、1時間後にここで待ち合わせましょう。私より先に出てきてたらもう一度行かせるわよ」

そう言うと静子夫人は女湯の方へ行ってしまわれました。

私は男湯の前で『男』と書かれた暖簾を眺めながらしばらく突っ立っていましたが、振り返った夫人が左手を大きく横に拡げて、「さあ、入って」というジェスチャーをするので、一つ大きな息を吸ってから、思い切って暖簾をくぐりました。そんなに沢山の人がいませんようにと祈りながら。


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